九州で見たトヨタ生産方式

適正在庫の広場 TSCブログ
2018/01/10

 

【九州で見たトヨタ生産方式】

(株)ティーエスシーコンサルティング 代表取締役
技術士(経営工学部門)、中小企業診断士 勝呂隆男

 

 

「在庫は悪だ」という思想は、今日では経営者にとっても工場管理者にとっても常識になっているようである。かつて在庫は、企業の財産であり、必要な資材を大量にかかえ、製品を倉庫の中にぎっしり持つことが企業の夢であった時代を考えると隔世の感がある。

在庫を多く抱えることは、それだけ多額の資金を眠らせることになり、経営効率を下げる結果となる。キャッシュフローの低下は経営体質を悪化させ、企業価値の下落を招くことにもつながる。また、造りすぎによる在庫は、陳腐化によるリスクを招くと同時に様々な効率低下の原因となる。

 

この考え方の源流をたどると、トヨタ生産方式に行き着く。トヨタでは、次のような「7つのムダ」ということを言っている。①造りすぎのムダ②手持ちのムダ③運搬のムダ④加工そのもののムダ⑤在庫のムダ⑥動作のムダ⑦不良をつくるムダ

 

この中で最もやってはいけないムダが、1番目の造りすぎのムダであり、その結果生まれるのが5番目の在庫のムダである。 トヨタの生産方式は、第1石油ショック時にその真価を発揮し、これをキッカケに世界中の企業が注目するようになった。今までは多くの企業が注目するようになった。今では多くの企業がその導入を試みてる生産方式である。

数年前、九州にあるトヨタの工場と別の自動車メーカーの工場をまとめて見学する機会があった。自動車メーカーの製造現場を比較することで、トヨタ生産方式の神髄を理解しようとする試みである。

そこで何を見たか?トヨタでは工程間の仕掛在庫を堂々と持って生産をしていたのです。疑問をぶつけると、「自分たちで考えて必要と判断したら、必要な在庫は積極的に持つようにしている。以前、同じ指摘をある学者から受けて、トヨタ生産方式の破棄と批判されたことがあるが、何もわかっていないのはそう言う外部の学者の方である」という答えが返ってきた。

同時に見たもう一社の工場は、トヨタ生産方式を導入しており、工程間の仕掛かりは持たず、しかも製造工程の自動化はトヨタより高度に進められていた。現場の作業員の動きも、トヨタよりもずっと速かった。しかし、当時の収益はトヨタの方がずっと良かったのである。 トヨタ生産方式を生み出した元祖トヨタと、これを導入しようとする会社の違いについて考えさせられた。

 

トヨタ生産方式を研究して導入している企業にとっての「あるべき姿」は、お手本であるトヨタのやり方にすぎない。それは現場の方針ではなく、導入を指導する部門や幹部の考え方や方針であることが多いようである。ところが、元祖のトヨタでは「現代の問題」が先生であり、現実的・合理的に問題解決を行っているのである。例えば、かんばん方式は問題解決の結果が形を示したものにすぎない。肝心なのは現実の問題の解決策を突き詰めて考え、常識にとらわれずに方策を実行していくという企業文化ともいうべき行動様式である。

 

トヨタのやり方に学ぶ企業はこれからも増えていくだろう。しかし、形だけ真似るだけではなく、現実の問題に学ぶという姿勢こそ導入すべきものである。

 

創造のひろば 九州生産性ニュース NO.103
平成15年5月20日発行 財団法人 九州生産性本部

 

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