第31回(通算89回)流れを把握・検知するダリ・アンプの応用

【なんとなくヘンだ!を大切に】

この原稿を書いているのは年末なのですが、私が還暦を迎えた昨年2018年は厄年そのものの1年でした。新年早々に首筋を手術したのを皮切りに、春にはノドの手術、夏には老眼の急進行で眼鏡の大リストラをし、秋になると頭皮に緊急通院治療で、年末最後にはとうとう緊急入院までしてしまいました。

結果的にすべてことなきを得まして、「結果よければすべてよし!」状態ではあるのですが、振り返るとかなりヒヤヒヤものではありました。ひとつ間違えれば植物人間状態となった可能性もあり、この原稿も書けなくなっていたかもしれないからです。

そんな危機の連続のような状況を、ホイホイとくぐり抜けられて来られたのには、ハッキリとした理由があります。それが章題に示した「なんとなくヘンだ!」なのです。

実はこれ、流れを止めない適性在庫値を計算する際に重要なファクターとなる「流れの測定」の核心技術たるダリ・アンプを、自分自身の体内に向けて運用した成果です。そこで、ここでは身近かつ自身の生命をかけて実証してしまったこの技術を、地頭思考で解説したいと思います。

あと、忘れるといけないのでここで言っておきますが、「なんとなくヘンだ!」と感じること、そしてその感覚を常日頃から尊重されることをオススメいたします。口に出す必要はなく、頭の中でいろいろと考えを自由に巡らすだけなので簡単です。この「なんとなくヘンだ!」という感覚に私は何回も救われています。

 

【アンサンブル気象予報と仮想確率推論】

以前も触れましたが、食品廃棄ロス削減を目的とする経産省の国家プロジェクトにおける気象庁や気象協会のエンジニアの方々との楽しい交流で教えていただいたのが「アンサンブル気象予報」技術です。近年の気象予報制度のめざましい向上はスーパーコンピュータのおかげで、最近の気象予報はこれを駆使して、メッシュ分割された大気空間内の分子運動1つひとつを運動方程式で予測計算するのだそうです。メッシュ分割の分解能をあげて予報制度を向上させてきたのだとのことです。20km四方のメッシュでは、海岸線の海側と陸側を分けて計算することはできませんが、これを20km四方まで分解能をあげると海陸を分割しての計算が可能になり、それを実現可能にしたのが、スーパーコンピュータの性能向上と廉価化なのだということでした。

大気中分子の運動方程式を解くと、分子1つひとつの時系列変化をシミュレーション予測することができますが、その初期値の設定がミソとなり、実測値を充てることは現実的に不可能なので、複数の値を人工的に割り当ててこれを種とします。そして1つひとつのシミュレーションの結果地のバラツキを採って、その統計を代用変数として、翌日とか1週間後とかの時点における大気状態を予測する。これがアンサンブル予測なのだという説明でした。

初期値たる“種”同士の違いはわずかなのですが、時系列変化を追っていくと、次第に相互の違いが拡大していきます。

「最初は些細な違いでも、時間の経過とともに相互の相違が拡大する」

この原理を一部応用し、予測方向を示すベクトルをフィードバックとフィードフォワードに分けて仮想確率計算技術を加えて開発されたのが、ダリ・アンプであります。つまり、種のわずかな相違を増幅する(アンプリファイアリング)手法がダリ・アンプということになります。

流れを止めない技術は、在庫ポイントを中心とする「入」と「出」のデータだけで、適正在庫値を計算可能とするもので、これまで苦労して収集してきたリードタイム測定を不要とする点に新規性が認められて、特許証の到着を待つばかりになっています。

 

【流れを止めない技術の使い方】

これまでにこの連載でも再三再四述べてきたように、在庫の定義を拡張していくと、サプライチェーン内の物品の流れだけではなく、金融取引における資金の流れや、送受電網におけるエネルギー流、あるいは情報データの流れなどにも応用可能な技術になることは容易に想像できます。もっとファンタジックに、ハピネスやストレスなどにも適用できるかもしれません。

となると、もしこの技術の特許がホントに成立すると、IoT時代における世界OSの基本技術の座を占めることになるかもしれません。トヨタ生産方式が郵便局やハンバーガーショップの業務改善に貢献したことは有名ですが、それに近い役割を果たせるかもしれないのです。われわれのモノづくりの場から生まれた技術が世界を変革できるかもしれないと考えられることは、喜ばしい限りです。

しかし、技術には両面があるもので、正しい方向に発展させていかないと、自分たちの首を絞めることにもなりかねません。また、多くの方々のご協力やご支援がなければ発展は難しいでしょう。つまりこの技術を公共のものとする場が必要であると、私は考えます。また、適正在庫値と同様に適正値がわかっただけでは意味がなく、それを維持していくノウハウも大切です。

というわけで、私にとって一番身近な存在である、工場管理の読者の皆さんのご協力を、今後ともよろしくお願いします!というのが、今回の結言となります。Join hands!

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