第29回(通算87回)「流れを止めない適正在庫理論」のナウシカ

【ジゼル・ヴィエンヌの人形劇】

ハロウィン騒動は年々激化しているようで、今年はついに逮捕者まで出てしまったようです。特に東京渋谷のハロウィンに集う若者たちは普段は会社で真面目に働いていて、この日ばかりは日頃のうっぷんを晴らすごとく大暴れするようですので、工場管理者のご参考になるのではと考えて注目していたのですが、ちょうどタイミングよく、若者の群れの興奮を描いた舞台作品が、京都国際舞台芸術祭で上演されました。

フランスの女性演出家ジゼル・ヴィエンヌ作の『CROWD』という作品で、フランスの批評家協会最優秀賞受賞作です。東京の日仏学院で開催された彼女のワークショップでお目にかかり、「時間劇の理論」(本連載第57回「工学的時間論」の発展形)と同様に、時間の相対性に注目していることを知ったので関心を抱いていたところでの上演でした。この作品、フェスティバル/トーキョー(F/T)の現代プログラム・ディレクターとして東京オリンピック招致を成功に導いた、芸術公社代表理事・相馬千秋氏をして「ジゼルはこれまで出会った中で最高にクレイジーな天才美女。1年前パリで観劇したが、脳内が覚醒しまくる危険な経験をするほどの傑作でした」と言わしめたもので、21世紀のヨーロッパを舞台に、若者たちの間に突然広まった伝染性の狂気を描いています。

本公演を観ることはできなかったのですが、ワークショップで拝見したハイライトシーン映像で、舞台上に狂ったように踊り狂う若者たちの2つの群れが現れます。2つの群れは異なるリズムで踊っているのですが、やがてそれらとは異なるリズムで踊り始める1対の男女が出現して、この第3のリズムが拡がっていくという映像でした。

ジゼル氏は哲学を学んだ後、人形使いや腹話術師と、人形との関係性を描いた舞台作品を多く手がけてきました。私も8年前のF/T10で『こうしてお前は消え去る』という作品を観たことがあります。この作品では、人形使いと人形の立場が逆転する様が描かれていましたが、『CROWD』では複数の人形使いの存在が表現されています。

 

【ユニバーサルネットとグローバルネット】

トランプ大統領のiPhoneが中国にハッキング(盗聴)されていたという報に触れて、IoT時代の情報セキュリティは大きな問題だなぁと考えを巡らしていたら、先の『CROWD』に示された複数の群れとはなんだろうという疑問に対する自分なりの解釈方法が見つかりました。

それは、伝染性の興奮に取り憑かれて踊り狂う若者たちを、操られ人形に見立てるという考え方です。この場合の操り糸をグローバルネットと呼ぶことにします。「インターネット+スマホ+VR」で構成される人口のデジタルネットワークとでも考えましょうか。イーサネットあるいはWiFiのベースバンド・クロック(工程管理のサイクルタイムに相当します)の周波数でトークン(伝送される情報の中身と)が巡回します。マチナカにいるときにスマホでWiFiを探すと、「XXXX5G」や「YYYY2.4G」など表示されますが、5G(Hz)や2.4G(Hz)の部分のことです。そして、人形遣いに相当する何者かが複数になったと考えるのです。

インターネットは当初、軍事情報ネットワークとして誕生し、ペンタゴンの独占であったものが、民生技術としてグローバルに普及しました。これが今日では、大統領のスマホが盗聴される事態となった訳ですから、人形使いが複数現れる時代になったのだと考えることができます。

さらに、後から出現して次第に拡がって行ったネットワークをユニバーサルネットと呼ぶことにしたのですが、これがユングの共同無意識や仏教の唯識論という訳です。「人はみな、つながっている」という宗教的な世界観の元となる考え方です。

このネットワークのベースバンド・クロックに相当するのはなんだろうと考えましたら、それが「流れを止めない適正在庫理論」の基礎を構成している「時間場の理論」で、時間長さの最少単位として参照しているプランク時間から導かれる「プランク周波数」ということになります。そして、この振動は「宇宙に生命が誕生するはるか以前から流れている虚空の音」と言われています。

グローバルネットの周波数は、数ギガであるようですから、ユニバーサルネットの周波数たるブランク周波数(1.854…×10の43乗)には到底及ばないことが理解できます。

私は、ジゼル氏は作品の中で、グローバルネットからユニバーサルネットに接続先を切り替えることを提案しているように受け止めました。

 

【ナウシカ作戦】

ジゼル氏は、現代奴隷の身である若者たちが、そこから解放される方策として、ユニバーサルネットへの接続切り替えを提唱していると考えた訳ですが、現実的にはグローバルネットとの接続を絶ってしまっては、日常生活も工場生産活動も、経済活動も立ちゆかなくなってしまします。そして、複数ネットに接続されている状態では、人形使いの糸同士が絡み合ったり、人形使い同士が敵対することで争いが発生することが想定されます。人形が奴隷状態から離れようと起こした行動が世界の争いにまで発展してしまっては、元も子もありません。

そこで思いついたのが「ナウシカ」というわけです。宮崎駿作「風の谷のナウシカ」では、怒り狂うオウムと人間たちの争いを「力」で治めるのではなく、ナウシカの振る「うなり笛」と笑顔で鎮めます。争いを鎮めることで糸の混線も解決し、流れが止まることもなくなります。さらに、グローバルネットワークの人形使いの数の適正値を知ることで、現代奴隷は解放されるかもしれません。

というわけで、前号の「流れのジェネレーター」である方々をこれからは、「ナウシカさん」(男女問わず)と呼ぼうかと思っております。私は、技術指導担当の「ユバ」役を志望します。

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