第17回 リードタイムは無理な短縮より、安定させるべし!

リードタイム短縮は大切な改善活動ですが、それ自体が目的となってしまうと方向を誤ることが多いようです。

多くの場合、リードタイム短縮=在庫削減として、限りなくリードタイム短縮を目指す傾向があるようですが、これは完全なる誤りです。なぜかというと、在庫削減はリードタイムを短縮するだけで実現できるような単純なものではなく、逆に無理なリードタイム短縮で在庫増を招くことすらあるからです。

このことを、適正在庫算出システムAPIMを活用した科学的・定量的なシミュレーションで示していきましょう。次のような条件での発注点を求めてみます。なぜ発注点かというと、リードタイムによって決まる適正在庫水準の指標値としては、発注点が最もふさわしいからです。所定の需要およびリードタイム条件下における在庫水準を示す値とお考え下さい。APIM関数の中の発注点算出関数で、一発で算出することが可能です。

部品調達を想定して、リードタイムとしては調達リードタイムを考え、需要としてはラインへの部品投入を考えます。どちらも確率分布でとらえるのがミソです。

<適正在庫算出の需要条件>

需要平均 :100個/ 日

需要標準偏差 : 30

需要頻度 : 50%

このような需要条件下で、以下のようにリードタイム分布を変えていく実験を行います。

 

1.(出発点)5日:80% 10日:20%

リードタイム分布は、調達リードタイムが5日で納入される確率が80%で、時々、5回に1回の確率で納期遅延を起こして、調達リードタイムが10日になるということを意味しています。リードタイムを分布でとらえることで、サプライヤーからの納期遅延率を表現することができるのです。納期遅延率20%です。

APIMの発注点在庫算出関数、apimrop5()を使って算出した、この条件における適正在庫水準は次のようになります。

適正在庫水準:618個

2.(LT短縮)3日:80% 10日:20%

次に、ここからリードタイム短縮を図った場合に適正在庫がどう変わるのかを試算します。リードタイムを2日短縮して、3日にした場合を考えます。この場合でも納期遅延は同じような確率で起こると考えます。すると、

適正在庫水準:615個

となります。在庫削減率にして、わずか0.5%です。血のにじむようなリードタイム短縮努力の結果が、わずかな在庫削減であるなら、そんなムダな努力はしないほうがいいと思いませんか?

さらにいうと、リードタイム5日を3日に短縮する(させる)ことで無理をさせてしまい、納期遅延の発生確率が高まることがあるかもしれません。この実験では、納期遅延率は変わらないとして計算しましたが、実際には増加する可能性が高いわけです。

3.(LT安定)5日:90% 10日:10%

次に、無理なリードタイム短縮は行わずに納期遅延を減らして、リードタイムを安定させたらどうなるかを実験します。リードタイム分布を変えて、納期遅延率を、20%から10%に減らした場合となります。すると、

適正在庫水準:538個

となり、13%もの在庫削減が実現されます。

これなら、無理にリードタイム短縮を図るよりも、リードタイムを安定させて納期遅延率を下げた方が在庫削減効果は大きいのだということがわかりますよね。

でも、この場合は平均リードタイムで考えると、リードタイムを短縮したことになります。ケース1の平均リードタイムは6日、ケース2は4.4日、ケース3は5.5日であるからです。

4.(LT安定+延長)6日:99% 10日:1%

そこで、サプライヤーに対して納期を1日伸ばして6日でいいから、そのかわり納期遅延のおこる確率を10%から1%へと大幅に下げてもらうケースを考えます。この場合、平均リードタイムは6.04日と長くなりますが、

適正在庫水準:531

となって、在庫が削減されることが示されました。

さてどうでしょう。最先端の適正在庫算出技術APIMを使うことで、リードタイムはやみくもに短縮するのではなく、安定させた方がいいのだとおわかりいただけたでしょうか。

コメントは受け付けていません。