2017年9月12日(火)週刊 適正在庫の視点からVol.167【解像度調整】

適正在庫の広場 TSCブログ
2017/09/21

【解像度調整】

JR品川駅が渋谷駅を抜いて乗降客数N0.5になったそうですが、

私はいつもこの駅で、「流れを読む」訓練をしています。

右から左から前から後ろからの人の流れの中を目的地まで進むためには 流れを読まなくてはならないからです。

将棋界きっての才人と呼ばれた米長邦雄氏が、著書「人間における勝負の研究」で披露している青春の思い出に新宿二幸前交差点の青春というお話しがあります。

いまでいうアルタ前横断歩道で、 反対側から歩いてくる女性を見極めてナンパしていたというおはなしです。

行ったり来たり何度でも往復して成功するまで繰り返せるので

成功率は100%だったそうですが、 誰に声をかければいいのかが段々分かるようになったということです。

私の品川駅での修行は目的が異なりますが(笑)同様の眼力が身につくようになってきました。

その際、いつもひとりひとりを追っていてはだめで 大きな流れをつかんだり、中程度のばらつきに注目したり、 ひとりひとりの表情まで読み取ったりと まさにカメラの解像度を上げたり下げたりを機敏に調整するのです。

このテクニックは、実はAPIM7に実装されています。

流れを止めない適正在庫量を算出するためには マクロな流れからミクロな流れまでのスペクトラムを とらえる必要があるからです。

そして、そのおかげでとてつもなく大きな可能性が広がってしまいました。

【廻れ!マリーゴーランド】

俺のやることを教えてやるよ。ひとつの場所が良さそうに思えたら、その場所の前に立って、一日に三時間だか四時間だか、何日も何日も何日も何日も、その通りを歩いていく人の顔をただただじっと眺めるんだ。 何も考えなくていい、何も計算しなくていい、どんな人間が、どんな顔して、そこを歩いて通り過ぎていくのかを見ていればいいんだよ。 まあ最低でも一週間くらいはかかるね。 そのあいだに三千人か四千人くらいの顔は見なくちゃならんだろう。 あるいはもっと長く時間がかかることだってある。 でもね、そのうちにふっとわかるんだ。 突然霧が晴れたみたいにわかるんだよ。 そこがいったいどんな場所かということがね。 そしてその場所がいったい何を求めているかということがさ。 もしその場所が求めていることと、自分の求めていることがまるっきり違っていたら、それはそれでおしまいだ。別のところにいって、同じことをまた繰り返す。でももしその場所が求めていることと、自分の求めていることとのあいだに共通点なり妥協点があるとわかったら、それは成功の尻尾を?(つか)んだことになる。あとはそれをしっかり?んだまま離さないようにすればいい。 でもそれを?むためには、馬鹿みたいに雨の日も雪の日もそこに立って、自分の目で人の顔をじっと見ていなくちゃならないんだよ。 計算なんかはあとでいくらでもできる。 俺はね、どちらかというと現実的な人間なんだ。この自分のふたつの目で納得するまで見たことしか信用しない。 理屈や能書きや計算は、あるいは何とか主義やなんとか理論なんてものは、だいたいにおいて自分の目でものを見ることができない人間のためのものだよ。そして世の中の大抵の人間は、自分の目でものを見ることができない。それがどうしてなのかは、俺にもわからない。やろうと思えば誰にだってできるはずなんだけどね

ー村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』より

第14回(通算72回)未来の基軸通貨

【ゾウの時間、ねずみの時間】

「自分の身体に合わせて呼吸するのではなく 呼吸に合わせて身体を調整せよ」

これは、スキンダイビングのインストラクターに教えていただいたことですが、その方いわく、本で読んだ知識ではなく、自身のダイビング体験から自然と習得したノウハウだということでした。

実際、スノーケルをつけて海に潜って泳いでいると、月の引力による潮の満ち引き、太平洋の彼方からのうねり、沖の漁船からの波、あるいは側にいる仲間からの水流など、流れに合わせて呼吸が進むことが分かります。その呼吸に合わせて身体を整えることで、心身が楽になり無理なく潜水できるのです。

この波のサイクルですが、海辺で観察すると、平均して1分間に18回押し寄せていることが分かります。そして、人間の平常時の呼吸数もこれと同じであることを最近になって知りました。呼吸というのは、地球のリズムに合わせて行われるものなのですね。

この呼吸数を4倍すると72になるのですが、この値は、平常時の人間の1分間の心拍数です。そして、ほ乳類の生涯心拍数は20億回で一定だという仮説があります。『ゾウの時間、ねずみの時間』(本川達雄薯)という本で知りました。ゾウのように身体の大きな動物は心臓の鼓動もゆっくりなので長生きをし、ねずみのように身体の小さい動物は鼓動が早く短命なのだという説明です。

20億回を平常時の人間の心拍数72で割った値を、365で割り、それを24で割り、更に60で割り算すると、約53となりますから、織田信長の時代に人生50年と言ったのは正しいのかなとも思えますし、眠っている時間の心拍数低下や個体差で補正するともっと正確な値になるのかなとも思えますが、標準寿命が生涯心拍数で決まるというのは、とても魅力的な仮説です。

【スマートウォッチに注目】

私のエンジニアとしての出発点はIE(インダストリアル・エンジニアリング)なので、ストップウォッチにはこだわりがあります。標準時間設定のための時間測定に使うのは、1分間を100分割するデシマルウォッチです。時間を集計するのに、そのほうが計算が楽なからですが、IEr(IEエンジニア)はやっぱりデシマルウォッチだろ〜って今でも思っています。新入社員の頃に、それまでのアナログ式ウォッチの先輩お下がりではなく、最新デジタル式の新品を買ってもらったときはとても嬉しかったです。独立時に個人で購入した、SEIKO S039-4000は、今でも宝物です。

というわけで、最近のスマートウォッチはとても気になります。スケジュール管理やメール受信機能がついているくらいのときは全く魅力を感じなくて、アスリート向けに心拍数や体温、歩数などの測定機能が付加させるようになって注目するようになり、最近の決済機能付モデルの登場でやばくなりました。私の要求スペックからすると、更に長期間のライフログ機能がついてくると、いよいよ試してみようかなの段階になります。

冒頭のスキンダイビングの趣味だけでなく、サーフィンやカヌー、トレッキング、トレラン、登山も大好きなアウトドア派・自然派ではありますが、一方で、パソコン小僧でもあり、ITガジェットコレクターで、人類のサイボーグ化にも否定的ではありません。ジェミノイドFという美人アンドロイド女優に、恋してしまった経験もあるくらいです。

【生命通貨の概念とその利用方法】

個人的な印象ですが、仮想通貨と呼ばれるビットコインなどの基礎技術であるブロックチェインとIoTの結合によって、新しい貨幣制度に移行する時代が近づいているように思えます。経済の仕組みが大きく変わりますので、われわれモノづくりに携わる者にも影響は大きいと思います。貨幣の機能には、支払、価値尺度、蓄蔵、交換手段の4つがあり、全ての機能を備えた貨幣は文字社会の誕生以降という事ですので、だいぶおおざっぱではありますが、次のような歴史観を持つことができます。

250万年前 人類誕生

3万年前 農耕開始=在庫の誕生

6千年前 通貨の誕生

2千年前 近代宗教の誕生

400年前 近代科学の成立

現代 適正在庫2.0(笑)

XX   生命通貨の誕生

ここで、「生命通貨」と称しているのが私の提案で、現在の基軸通貨を、生命量=生涯時間数に置き換えようという発想です。在庫の事を研究していると<腐らない在庫>というのが、自然の流れに反する諸悪の根源になっているように思えます。在庫は悪だ、ではなく、腐らない在庫は悪だ!というわけです。

腐る、つまり有限の寿命があって、万人に等しく分け与えられているものは何かというと、時間であり、生涯時間ということになります。適正在庫の基礎理論たる「時間場の理論」によれば、時間は相対的なもので、存在物それぞれが時間を持つことになります。先に述べたように、生涯鼓動数20億回が各人の持つ時間ということになりますから、スマートウォッチで測定された鼓動回数を基に、ライフログ機能を付加することで、ある能力を習得するために費やした時間総量までを含めての価値尺度計算機能を持たせ、その支払、交換、蓄蔵までをスマートウォッチで行うというアイデアです。メディアによる拡散効果と能力習得時間までをカウントすると、それが「付加価値」の新定義になります。

以上のアイデアを具現化するための、技術が適正在庫2.0であり、基礎理論としての時間場の理論というわけです。電機メーカーの凋落や電気自動車の戦略ミスで日本経済の行方に暗雲が漂っていますが、もしかしたら、適正在庫の技術から新しい未来が切り開かれるかもしれませんね。

 

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第4回(通算62回)安全在庫の古典理論計算式は科学的な誤りでした

|公式を鵜呑みにしてはいけない

 

数学や物理の受験勉強では、公式や定石をたくさん覚えて試験に臨んだ方が多いと思います。

モノづくりや生産管理の世界にも公式・定石はたくさんありますが、これを鵜呑みにしてはいけません。

なぜなら、そのようなテクニックができたときの前提条件が変わってしまったら、役に立たないどころか害悪にすらなることがあるからです。

学校の試験では前提条件がきちんと決められていますが、

現実のビジネスの世界は日々変化を続けており、誰も前提条件を保証して採点をしてくれるわけではないからです。

 

生産管理でよく使われる公式に、安全在庫計算式がありますが、
最近、Yahoo!知恵袋からこんな回答要請がありました。

 

ID非公開さん 2016/8/2915:34:11

「適正在庫数と安全在庫数の求め方を教えてください。 全くわかりません。

 

 

いろいろ調べたところ、

 

適正在庫数の求め方

適正在庫数=その商品の1日あたりの平均売上数×発注から納入まで日数×安全率

安全在庫数の求め方

安全在庫量=安全係数×出庫量の標準偏差×√調達リードタイム

 

ここまではわかりました。

適正在庫数>安全在庫数 となるのはなぜでしょうか?

 

私はこの質問に対して、次のように回答しました。

 

適正在庫の公式定義は以下の通りです。

適正在庫 = サイクル在庫 + ミニマム安全在庫

欠品防止のために決めたサービス率を必要最小限満足させるミニマム安全在庫を保有して所定の販売・需給・輸送ならびに在庫の管理方式をとったときに工場または販売拠点等が保有する適正な平均在庫のことである。

(『工場管理』誌2016年2月号にて告示・公開済)

 

適正在庫、安全在庫の間違った俗説に振り回されているようですが、問題意識をもったことは大変素晴らしいことです。 もっと勉強したかったら、私の名前で検索してみるといいでしょう。 ご健闘をお祈りします」

 

在庫理論は純粋に数学論理で構築されていますので 正誤は論理的に明らかにされるのですが、

最近、この手の質問に対する回答要請が多く、世の中には誤った俗説が溢れているように思えます。さながら、悪貨が束になって良貨を駆逐しようとしてるかのような感もあります。

 

|安全在庫計算式のディメンジョンチェック

 

約半世紀前に生まれた「統計的安全在庫の理論」(安全在庫の古典理論)では、安全在庫計算式として次式を示しています。

 

安全在庫  ss=k√Tσ‥‥①

(k:安全係数、T:リードタイム、σ:需要標準偏差)

ここで、標準偏差は次のように計算されます。

標準偏差  (※数式表示不可のため、計算式省略)‥‥‥②

これを基に①式をディメンジョンチェックすると、

[N]=[√TN]‥‥‥‥‥‥‥③

(N:個数・回数、T:時間)

 

となり、左辺と右辺の単位が異なるために、この公式は論理的に誤りであると結論づけられます。

 

ディメンジョンチェックというのは、物理学者がよく使う手法であり、ある公式が導出されたときに左右両辺の単位を調べて左右で単位が一致するかどうかで、正しい公式かどうかを確認するものです。科学技術の基本中の基本となるものです。

 

|リードタイムの数え方を変えると

 

以上に示したように、

安全在庫の古典理論による計算式は科学的に誤りであったことが証明されてしまいました。

半世紀以上にわたって定説とされ、大学でも教えられており、情報処理技術者試験など、国家試験資格などでも出題されていたものですから、かなりショッキングなことです。

私も大学で学んだ計算式を何の疑いもなく受け入れて、日刊工業新聞社発行の自著でも解説していましたので責任を感じております。

 

幸いにも、自著では、現代では使い物にならない理論式として批判的に扱っており、それを改良する理論としての適正在庫理論を紹介しておりました。

 

そしてこの理論では、特許にもなった新しい方式でリードタイムを数えます。

この教え方に基づきディメンジョンチェックを行うと④式となり、科学的に正しい安全在庫計算式であることが確認されます。

これでまずは、一安心です。

[N]=[N]‥‥‥‥‥‥‥‥‥④

 

この正しいリードタイムの数え方とは、1回、2回、3回…と回数を数えるように時間を数えることです。

つまり、飛び飛びの値で時間を数えるということで、時計でいうと、アナログ時計ではなくデジタル時計の方が正しい時間の数え方であるということになります。

 

これも誤った俗説の部類になりますが、

安全在庫計算式①の√の中に、半月だから0.5カ月であるなどと少数の値を入れて計算するのは、完全な間違いということであります。

 

以上に示したように、世間で常識とされている公式には間違ったものが含まれていますから、

それを鵜呑みにせず、まずは地頭で考えることが大切なのです。

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適正在庫のパイオニア|勝呂隆男(すぐろ たかお)

◼︎資格
文部省科学大臣 技術士(経営工学部門 39376)
経済産業大臣登録 中小企業診断士(現在休業中)
DETAILED WORK-FACTOR (SMC)

◼︎公職・所属
(1999-2005)   早稲田大学 招聘講師
(1999-)      中小企業大学校 講師
(1999-2000)   職業能力開発総合大学校 非常勤講師
(2004)    東京工業大学 招聘講師
(2004-2005)  経済産業省 戦略的基盤技術力強化事業中間評価委員
(2014-)               経済産業省委託 日本ロジスティクスシステム協会事業
「次世代物流システム構築事業」コンソーシアム委員

適正在庫セミナー_テクニカルソリューションズ(株)