第7回 神はサイコロを振るか?

アインシュタインは「神はサイコロを振らない」と言ったそうだが、世界の現象の多くはサイコロが振られて決まっているように見える。確率論的世界観である。

適正在庫の理論も、需要変動や供給変動を確率現象としてとらえることで成り立っている。世の中のさまざまな出来事を確率現象としてとらえる確率論的世界観というのは、極論すれば「神はサイコロしか振らない」である。

そして、そのサイコロがどんな形状をしていてどんな目の出し方をするのかを、サンプルデータから推測しようとするのが統計学である。統計学では、現実の世界の出来事をサンプルであるとして、そのサンプルから神の世界の真の姿を推測しようとするのである(厳密には推測統計学といい、単純にデータを集計するのは記述統計学という)。

APIMで適正在庫を計算するときに用いる需要データは、いつのデータであるかによって特性が異なる。特にここ数年は、リーマンショックあり震災ショックありで、市場が大きく変動して需要も乱高下を繰り返した。そのため、APIMユーザーはいつ頃のデータをどれだけの期間集めればいいのかに悩むことが多い。

そんなとき、いつもお見せするのが図1のグラフである。

このグラフは、ある照明製品の販売実績データから、平均と標準偏差と変動係数を計算して、その月別推移を示したものである。販売数の平均値は、11~12月にピークを示しているが、標準偏差の値はそれほど大きなピークを示していない。さらに、標準偏差を平均で割った値である変動係数は、ほぼ年間一定である。

需要が乱高下しているときでも、日別販売数の平均は大きく振れても、そのバラツキそのものである標準偏差の値はそれほど大きく振れることはなく、さらに変動係数に至っては、安定した動きを見せることが経験的に確認されている。ここに示したグラフのデータだけでなく、最近のリーマンショック前後や震災ショック前後のデータからも、同様の傾向を示す需要実績データのあることが確認されている。

このような現象は、統計学の言葉でいうと「需要の確率分布の形状は変化しないが、確率変数軸方向にスライドしている」とでもいうべきものである。さらに、神のサイコロの比喩を使って説明すると、こういうことだ。つまり、神の振るサイコロは同じものだが、神様はときとしてサイコロを増やしたり減らしたりするのだと。

というわけで、APIM導入に際しては過去需要のトレンドを中長期にわたって分析してから、ターゲット期間を決めて、実績データの収集をすることになる。需要の安定している商品は短期間のデータで十分であるが、乱高下の大きな商品は中長期間にわたるデータ収集が必要となることになる。

中長期のデータをみていると、明らかにトレンドが変わる時点が存在する。それも確率分布そのものが異なる分布に変容したのではないかとみなされる点だ。これまで、それはグラフを目でみて判断していたのであるが、その見極め方法を専門的に研究する人がいた。この連載の第3回で紹介した、神楽坂SCMサミットのメンバーである竹之内隆氏(カイゼン本舗)である。彼は需要予測の新しい技術として、研究開発を進めているそうである。潮目の変化が起こっている期間をインパルス・ゾーンといい、変化そのものをトレンド・トラップという。さらに、トレンド・トラップは、エアポケット・トラップ、Vトラップ、サイクル・トラップの3パターンに類型化されて研究されている。

APIMユーザーにとっては、適正在庫算出時に用いる過去データ期間の選定に使えるだけでなく、インパルス・ゾーンに入ったことを検知した時点で在庫基準値の見直しを行えばよくなるので、より精度の高い生産・在庫管理を実行することができるようになる。

竹之内氏とは、今後もさらなる連携を進めていくことにしている。神楽坂SCMサミットで目指している生産管理技術の革命も、着々と進行しているのである。

第6回 押してもだめなら引いてみな!

先月に引き続き、再び一品別管理の重要性にまつわるお話をしたい。

昨年末に在庫削減の相談を受けて訪問したA社で、適正在庫算出システムAPIMを最近導入したところとしてX社の名前を出した瞬間、激しい反応があった。「X社が在庫削減なんて100年早い!!!」と。

A社では資材調達部門と生産管理部門が中心になって在庫削減プロジェクトが組織され、そのメンバーの方々向けにお話をしに行ったのであるが、彼らはX社の納期遅れにはほとほと手を焼いているのだという。

どうもA社では、在庫適正化=在庫削減、と誤解している節もあるのだが、あまりにも激しい反応だったのでびっくりしてしまった。そして、同時に、X社の社長の言葉を思い起こすことになった。

社長の言葉というのはこうだ。「俺は在庫削減なんてする必要はないと思っている!」X社は銀行をはじめとする取引先やアナリスト達から過剰在庫を指摘されていたのであるが、社長は頑として在庫削減活動にゴーサインを出さなかった。

在庫削減ではなく在庫適正化だと説明し、事前に実施した適正在庫試算結果を示したうえで、在庫を増やす品目と減らす品目の両方があるのだから決して在庫削減だけが目的でないと理解していただき、ようやくAPIM導入が決まったいきさつがあったのである。つまり、社長は顧客の立場で判断していたのだ。「顧客への納期も守れないで在庫削減なんて早すぎる」と。

X社ではその後、一品別に製品在庫の適正値を算出して、それを基準値にして在庫適正化活動を進めている。在庫を積み増す品目と削減する品目は相半ばしており、トータルで在庫削減が達成される見込みである。APIMで適正在庫を算出する際には、生産リードタイムの日数分布を用いるのであるが、調べてみると、確かに生産リードタイムの振れは大きく納期遅れも頻発していた。

APIMでは適正在庫を2段階で設定する。まずは現状の実力に応じた適正在庫。リードタイムや納期遵守率、歩留まり変動など、現場の実力相応の適正在庫である。リードタイム短縮や納期遵守率向上などの改善活動をすることで、実現できる在庫水準は次の段階の適正在庫となる。それゆえ、第1段階として現状の生産リードタイムを前提とした適正在庫基準値を設定したのであるが、それでも大きな在庫削減効果が見込まれた。

工場では、何が起こったか?当初、適正在庫を設定すること自体に大きな疑問が示された。うちは生産遅れが常態化しているから、理論値なんて役に立たないと。これは、リードタイムが変動することを前提に適正在庫を算出するAPIMの実行結果を見せることで納得してもらえた。確かに現場感覚に近い適正値が得られると。しかし、生産計画の策定に適正在庫基準値を、なかなか用いようとしないのである。

それはなぜか?生産予算の達成を最優先しているからである。しかも、生産予算は常に生産能力を上回る値で設定されている。顧客への納期遅れの解決策として、どんどんつくらせる必要があるとの経営判断があるからだ。さらに悪いことに生産予算は総枠設定で一品別設定ではない。

その結果何が起こるかというと、つくりやすいモノからつくっていくという現象である。まさに先月号で述べた、減らしやすいAランク品目から在庫を減らそうとして欠品と過剰在庫の同時発生を招いている現象と同じことが起こっていたのである。つくりやすい品目で生産予算達成を目指す結果、在庫が不足していて本当に必要な品目の生産よりも、在庫は余っているのにつくりやすくて生産高を稼ぎやすい品目の生産が優先されることになる。あるいは、必要量以上にまとめ生産をして生産高を稼ぐという現象が起こっていたのである。

以上の問題点がわかり、本社スタッフが懸命に改革を進めている途中段階で、A社とのいきさつがあったのである。けれども、X社では改善の成果が出始めており、おそらくあと半年もすれば、A社の資材担当者もびっくりするくらい納期改善が達成される可能性が見えてきた。

この事例で学ぶべき教訓は、先月に引き続き一品別管理の重要性が挙げられるが、それだけでなく、「押してもだめなら引いてみな」ということもある。つまり、工場に過剰な生産ノルマを課して押し出そうとするよりも、適正在庫を間にかませて市場からの引っ張りに応じた生産を行うことの重要性である。

つくりたいモノをつくるのではなく、売れるモノをつくるというごくごく当たり前の原則に、すべては行き着くのである。

第5回 在庫管理の鉄則は一品別管理!

1.<いばらの道>も一歩から

筆者が生産管理の世界で、(在庫削減ではなく)在庫適正化を主張し始めたのは2000年に日本IE協会の適正在庫セミナー講師を務めるようになってからであるが、それ以来、コンサル仲間から物議をかもす奴だと敬遠されたり、雑誌などで大御所の大先生方から一方的に攻撃されたりなど、わが歴史はいばらの道であったなぁと思う。

しかしその後、リーマンショックのような経済危機だけでなく、各地震災・水害などによるサプライチェーン寸断などの経験を経て、在庫に対する世の中の考え方はだいぶ変わってきたように思う。適正在庫のセミナーは、その後、主催機関が増えたり減ったり変わったりと変転を経ながら継続され、「適正在庫の考え方・求め方セミナー」と名称はやや変更されたが、累計受講者が2,000名を超えるロングランを続けている。

現在は同業者をお断りしているが、ある時期までは、SAPジャパンやSASのようなソリューションベンダーのプロフェッショナルたちが受講して在庫理論を学び、それを基に彼らのクライアントに技術指導していたので、同セミナーはこの分野におけるいわば元売り的な存在である。一般企業でも、トヨタやパナソニックなど、日本を代表する企業の多くが受講者を送り込んできた。

 

2.<初心忘るべからず>のココロとは

このセミナーで、最初から一度も変更を加えていないパワーポイントのスライドが1枚だけある。それは“このセミナーの狙い”のスライドで、初心を忘れないためにあえて変えずに使い続けている。このスライドのポイントは、「そもそもできっこないことを、人に強制することもされることもしたくない」ということである。つまり、在庫ゼロは原理的に実現不可能なことなのに、これを実現したりさせようとする悲しい無駄が許せなかったのである。多くの場合、在庫ゼロは体育会系的な精神主義・根性主義の強圧的な指導で進められており、これを排して、もっと科学的で合理的な問題解決を図れないものかと考えたのだ。

このことで連想するのは、キリスト教の“汝姦淫するなかれ”という教えである。人間、生きていればエッチなことを考えてしまうのは自然なことなのに、それを悪と決めつけて相手に罪悪感や劣等感を植え付ける点が同じ手口だと思うのだ。

キリスト教の場合(信者の方、どうかお気を悪くされないでください。これはキリスト教だけでなく他の宗教でも、宗教以外でも言えることだと思っています)、懺悔させたり、ある時代には免罪符を売りつけたりしていたわけで、他者を自分の思い通りにコントロールしようとするときのテクニックとして、相手が絶対できないことを要求するという手口があるように思えてしまうのは、筆者だけではないと思う。

 

3.在庫は<減らさず>、<適正化>する

そんな考えが背景にあって、在庫を持っていることで、持たなくてもいい罪悪感を持たせられている方々を救いたいなぁという思いが、適正在庫という考え方の原点になっている。そのため、この「適正在庫の広場」では、筆者は在庫を減らそうとは言わず、適正化しよう!と言っている。

在庫削減と在庫適正化の違いは、在庫適正化では、減らす品目と増やす品目の両方がある点である。一生懸命在庫削減活動を進めているのにいっこうに在庫が減らないという相談を受けて工場を訪問すると、ほとんどの場合、適正在庫数に比べて多すぎる品目と少なすぎる品目の両方が混在していることが判明する。さらにその原因を調べてみると、それが経営トップの在庫削減大号令であることがある。

つまり、経営方針として「在庫を減らせ!」を掲げると、現場では“減らしやすいAランク品から手をつけて、減らしにくいCランク品は後回し”にするという事になりやすい。その結果、売れ筋の在庫が必要以上に減らされることになる。売れ筋なので欠品を防ぐようにと過剰管理が要求されて…と、きちんと管理をしようとすればするほど事態が悪化していくのである。

けれども、このケースで悪いのは、号令をかけたトップではなく、トータルで在庫削減の効果を出せばいいと考えたスタッフである。なぜなら、在庫管理の鉄則は一品別管理であって、決してまとめで考えてはならないからだ。

まとめ生産はよくないといわれるが、在庫管理においても同じである。一品別に適正在庫を算出して、増やすべきは増やし、減らすべきは減らすという一品目ごとの管理が大切なのである。

 

さて、筆者が、「第3章安全在庫配置とサプライチェーン構成」の翻訳を担当した『サプライチェーンハンドブック』(朝倉書店刊)が増刷となった。欧米におけるSCM研究の到達点を示す重要文献であるので、ぜひご覧になっていただきたい。

第4回 足し算・引き算の生産管理

先月号で「生産管理はもっと簡単になる!」と述べたところ、多くの反響があった。そこで、今月はどうして簡単になるのかを説明しようと思う。

ひとことで言うと、適正在庫基準値を正しく設定すると、生産管理は足し算と引き算だけで実行できてしまうようになるからなのだが、そのことを以下に解説していく。

生産管理のさまざまな機能のなかで、適正在庫を導入することで解決するのは、生産計画の部分である。多くの生産管理担当者がいちばん頭を悩ませているところだ。生産計画のはたらきを簡単にいうと次のようなことになる。

<何をいくつ、いつ、つくるかを決める>

つまり、品目と数量と時期を決めることが、生産計画の大切な機能ということになる。この機能をどう実現するのかについて、生産リードタイム分類に基づいて説明していく。

 

1.短リードタイム品は発注点管理で!

生産リードタイムの短い品目は、発注点を設定して発注点管理を実施すればいい。発注点管理とは、毎日在庫数をチェックして、これが発注点を割ったらあらかじめ決められた数量の生産指示を出す、という生産管理方式だ。いろいろある管理方式の中で、最も簡単に運用できる方式である。

短リードタイム品には発注点管理というが、どの程度の長さのリードタイムを短いとするかが判断の分かれるところだ。厳密には、発注点管理をとったときの理論在庫(理論的な平均在庫)と、次に述べる定期発注方式をとったときの理論在庫とを比べて、発注点管理をとった場合の理論在庫のほうが小さければ、発注点管理を採用することになる。発注点管理方式をとったときの発注点の値は、リードタイム期間中の需要をまかなえるだけの在庫量プラスアルファとなるので、リードタイムが2~3ヶ月以上に長くなると在庫月数は2~3ヶ月以上となり、在庫増を招くことになるのである。

発注点管理を導入するときに一番大切なことは、正しい発注点を設定することである。しかしこの値、広く知られている古典在庫理論では、正しい値を求めることはできない。なぜなら、古典理論では、間欠需要やリードタイム変動に対応していないからである。在庫理論の教科書を読んで、実際の在庫管理にあてはめてみたけれど、どうも使い物にならないという相談が多いのはこのためである。

今、正しい発注点を算出する唯一の方法は、適正在庫算出システムAPIMを導入することである。APIMを使うと、誰でも簡単に正しい発注点を求めることができる。あとは、日々の入出庫数を足し算・引き算して在庫数のチェックをし、発注するかどうかを決めるだけで生産管理が実行できてしまうのである。

 

2.長リードタイム品は定期発注方式で!!

生産リードタイムが長い場合は、生産指示を出した品目ができあがる頃の需要を予測して、いくつ生産するかの数量を決める生産計画を立てることになる。月に1回とか、週に1回とか定期的に生産計画を作成するので、定期発注方式である。

この方式の場合は、毎月あるいは毎週きまった日に生産指示を出すことになるが、そのときの生産指示数をどう決めるかがポイントとなる。

 

生産指示数=対象期間中需要予測量+リードタイム中需要予測量-手持在庫-発注残+安全在庫

 

この計算式に基づいて、粛々と生産指示数を求めればよい。需要予測数として営業部門から販売計画をもらえれば、あとは足し算と引き算だけである。実に簡単である。ただし、安全在庫を正しく設定する必要がある。これは、APIMを使うことで簡単に算出可能になった。この安全在庫は、需要予測誤差や在庫予測誤差、あるいは納期遅れや歩留り変動などさまざまな要因を考慮して求める必要があり、従来の在庫理論では、まったく歯が立たないようである。これも目下のところ、APIMを使うのが唯一の解法ということになる。

 

3.それ以外は、、、

ERPや生産管理パッケージで、MRP方式をとっているところは、MRP安全在庫をAPIMを使って求めて、システムマスターに登録するだけでOKである。あとはシステムが自動的に発注を出してくれる。

かんばん方式を導入しているところは、かんばん枚数に相当する補充点を、APIMで計算すればよい。現場のカンと経験に過度に頼る必要はない。科学的手法を使ったほうが得策である。

 

以上のように、適正在庫基準値である発注点、安全在庫、補充点を、APIMを使って正しく設定することで、生産管理は足し算と引き算の世界になるのである。

第3回 神楽坂SCMサミット

ギリシャ神話に「ゴルディウスの結び目」という伝説がある。

昔々、神に献じられていた荷馬車が、複雑なかたい結び目で神殿に縛り付けられており、これをほどいた者は全アジアの王となるであろうと伝えられていた。これが、ゴルディウスの結び目である。多くの者がこれをほどこうと挑戦したが誰もほどくことができなかった。

アレクサンドロス大王は、この伝説を耳にし、彼も結び目をほどこうとしたが、いっこうにらちがあかず、もどかしくなった彼は剣を抜き放ち、一刀両断、結び目を断ち切ってしまったという。

皆が、複雑さをそのまま扱おうとして、複雑な世界から抜け出せないでいたときに、彼は抜き身の剣のような純粋さで、複雑な世界を切り捨てたのである。そして、世界の覇者となった。

………

技術というのは優れたものが生き残るのではなく、力のある者に利益をもたらすものが生き残る。長年のエンジニア人生を振り返って、私が思うことである。

原発技術について考えると、とりわけその思いが強くなる。地熱発電技術など安全で優れた技術があるにもかかわらず、それよりも危険で未熟で複雑な原発技術の開発が優先されてきた。原発技術に投じた資金と時間を、自然エネルギー技術や蓄電技術に振り向けていたらもっと違った結果になったであろうことを考えると、つくづく悔しい思いになる。

生産管理技術の世界においても、それは同様である。“かんばん方式”は、力のある完成車メーカーの在庫削減・コスト削減には有効な方式ではあるが、立場の弱い下請企業にとっては過剰な在庫負担を強いられるものであった。私は中小企業診断士として現場の社長たちから生の声を聞くことが多かったが、世の中のトヨタ式ブームに反して、彼らの怨嗟の叫びを聞くことが多かったように思う。

生産管理システム、なかでも生産管理情報システムについては、その技術の主導権を握ったのは、ユーザーではなくコンピュータメーカーやソリューションベンダーであった。CIMやMIS、SCMといったキーワードが、彼らのセールスコピーから始まったことを思い起こせば納得できるであろう。

例えば、MRPがERPの標準的な方式となるほど生産管理方式としてメジャーなのは、コンピュータ業界やソリューションベンダー業界に利益をもたらすものであったからである。

初期のMRPで資材所要量計算を実行するためには、高価で高性能なコンピュータの導入を必要としたし、これが安価なパソコンでも実行できるようになると、今度は高精度の需要予測を売り物にするソリューションベンダーが登場する。MRPの構造的欠陥により、この方式のもとでは需要予測を的中させる以外に在庫を適正化することは不可能だからである。かくしてMRPユーザーは、不完全なシステムに膨大な投資を繰り返す結果となった。

生産管理は難しい、生産管理システムは複雑であるなどなど、生産管理や在庫管理の相談をもちかける方々の悩みはもっともである。MRPに限らず、不完全な生産管理システムしか提供されてこなかったからである。そしてその不完全さと複雑さのおかげで、ソリューションベンダーの仕事の種は尽きることがない。

また、生産管理の解説書も同罪である。何度繰り返し読んでもよくわからないのは、読者の頭が悪いからではなく、筆者もよくわかっていないからである。難しい内容をより難しく書くことで読者を煙に巻いているのかもしれない。

生産管理は複雑で難しいので、システム開発に時間も費用もかかるものであると、われわれは思いこまされているのではないだろうか。なぜなら、APIMを活用して正しい在庫基準値(発注点、安全在庫、補充点など)を設定・適用することで、生産管理システムの問題はきわめて単純に解決されるからである。まさに、アレクサンドロス大王の“抜き身の剣”である。

 

この技術を武器に生産管理の世界に革命を起こそうともくろんでいる

 

先日、このもくろみを密かに心に抱いて、ある会合をセットした。アスプローバの高橋さん、カイゼン本舗の竹之内さん、ゴール・システム・コンサルティングの村上さん、ジット経営研究所の古谷さん(いずれも社長、五十音順)と私が、神楽坂のさる料亭に集まったのである。

会には『神楽坂SCMサミット』という名前がつけられ、生産管理の世界に革命を起こす方向に向かって活動を始めた。活動内容は、この連載でも紹介するが、主にツイッター、フェイスブックで紹介していく。ぜひチェックしてみていただきたい。