第9回 今さらですが、、、適正在庫とは何か?

 

|適正在庫とは「何か」

今さらですが、この連載のタイトルである「適正在庫」とは何かについて、きちんと説明をしようと思います。生産管理の世界で適正在庫という考え方を広めてきた者として、この言葉の定義をきちんと定めて世の中に知らしめる責任があると思ったからです。

生産管理用語としての適正在庫は、新聞・雑誌の経済欄などで目にする適正在庫とは少し意味が異なります。経済用語としての適正在庫には、一般的な言葉として、経営者やエコノミストが適正と考える在庫水準といった意味があるようです。しかし、この言葉を生産管理の専門用語として使うときには、次に示す定義があるということを押さえておかなくてはなりません。

 

|適正在庫の定義

欠品を防止しながら在庫を減らせる限界値。
平均在庫として示される。

|注意すべき2つの点

欠品防止と在庫削減はよくおわかりだと思いますが、平均在庫というところが理解しにくいのではないかと思います。在庫という言葉が出てきたら、注意しなくてはならない点が2つあります。

1つは、いつの時点の在庫かということ。在庫数・在庫量はつねに変動しています。モノが出荷されれば減るし、入荷されれば増えます。ですから、在庫が多いか少ないかについて議論するときには、いつの時点の在庫を見て判断するのかを決めておかなくてはなりません。

財務的には会計年度の期末在庫金額が問題になるので、マネジメントサイドからは期末在庫の最少化を求められることが多いようです。しかしだからといって、押し込み販売をしたり、出荷時期を調整して洋上在庫化したりすることで在庫を少なく見せかけるようなことはおすすめできません。

生産・在庫管理の健全さを測るためには、平均的な在庫水準である平均在庫で見る必要があります。これは、毎日の在庫数をカウントしてその平均値を計算して求めます。生産管理・在庫管理の実力を測定するには、この値が最も適しているといえます。

 

もう1つの注意点は、どんな種類の値かということです。いくつあったか、あるのかを数えた測定値は別として、発注点や安全在庫のような基準値と、理論在庫や未来在庫のような予測値の2つの種類の在庫を分けて考える必要があります。

基準値というのは、発注のトリガーとなる発注点や発注量計算式の中の項として現れる安全在庫のように、発注行為のよりどころとして使われるパラメータの数値です。予測値は言葉通りの意味で、理論在庫は所定の在庫管理を実施した時の平均在庫の予測値であり、未来在庫は出荷予測と入荷計画の差し引き計算で求められる将来時点での在庫数の予測値です。

 

ここまでの説明で、もうおわかりかと思いますが、適正在庫というのは、時点でいうと平均在庫であり、種類でいうと予測値ということになります。欠品を防止して、なおかつ在庫量が最少になるような適正な在庫管理を実施したときに実現することが予想される平均在庫ということです。最適な在庫管理を実施したときの理論在庫であるといってもいいでしょう。そしてこの値を求めるための、適正在庫の計算式は次のように簡単なものです。

 

|適正在庫=安全在庫+サイクル在庫

安全在庫は、発注点方式の安全在庫、定期発注方式の安全在庫、定期補充方式の安全在庫をそれぞれ用のAPIM関数を使うことで求めることができます。

サイクル在庫は、発注点方式の場合は固定発注量の2分の1、定期発注方式と定期補充方式の場合は、期間平均需要量の2分の1で求めることができます。

このようにして求められる適正在庫の値をどう使うか。筆者の経験では、現状在庫数の評価のために使う場合が一番多く、次いで在庫削減活動の目標値として使う場合が多いようです。自分の会社の在庫がどの程度多いのか少ないのか判断がつかないというところは意外に多く、こういうところには大いに役立っています。本当に適正な在庫であるかどうかは、他社がどうしているかから求める業界平均値などではわからないからです。

また、基準値ないしは参考値として使う場合もあります。これは生産計画を立案する際に、適正在庫に落ち着くように投入量を調整するというケースで、生産能力や歩留まりの制約があって機械的に計画を策定できないので、ベテランが鉛筆なめながら考える場合です。こんな場合でも、適正在庫がわかると計画づくりが大変楽になります。

 

—————————————————————————————————————————————–

—————————————————————————————————————————————–

適正在庫のパイオニア|勝呂隆男(すぐろ たかお)

◼︎資格
文部省科学大臣 技術士(経営工学部門 39376)
経済産業大臣登録 中小企業診断士(現在休業中)
DETAILED WORK-FACTOR (SMC)

◼︎公職・所属
(1999-2005)   早稲田大学 招聘講師
(1999-)      中小企業大学校 講師
(1999-2000)   職業能力開発総合大学校 非常勤講師
(2004)    東京工業大学 招聘講師
(2004-2005)  経済産業省 戦略的基盤技術力強化事業中間評価委員
(2014-)               経済産業省委託 日本ロジスティクスシステム協会事業
「次世代物流システム構築事業」コンソーシアム委員