第21回(通算79回)恵方巻と、食の安心コミュニティ

 

【コンビニでのバイトが在庫管理の原点】

 

私の発行しているメルマガ『週刊適正在庫の視点から』でコラム欄を担当している尾関優歩さんから、本掲載への応答として、「肉まんは、分け合って食べるとおいしい」というメッセージをいただきました。

 

このメッセージから、食の安心コミュニティという着想が起こりました。食べる人だけでなく、畑を耕す人、漁をする人、牛を育てる人、運ぶ人・・・そして料理する人、という人々のつながりの中での食をとらえるべきだという発想です。

そんな折、「恵方巻きにみる食品廃棄ロス問題」を解説をして下さいと依頼されましたので、昨年まで、経産省・国家プロジェクトの有識者委員として食品廃棄ロスを削減する活動を3年ほど行っていた経験を踏まえて、この問題を考えてみたいと思います。

 

この場合、廃棄ロスを極力少なくするためには、適正在庫を計算して、その値に基づいて生産計画を立てればよいというシンプルな結論になってしまうのですが、わかっていてもなかなか思い通りにいかないというのが世の常なので、そのあたりを地頭アプローチで攻めていこうと思います。

恵方巻きの大量廃棄問題は、コンビニが恵方巻きキャンペーンを始める様になった10年位前からということです。なので、まずは私とコンビニとのかかわりから話を始めたいと思います。

 

もう40年以上昔になりますが、大学生時代に、安下宿の近くにできたばかりの、セブンイレブンでバイトをしていました。冷蔵庫への飲料の補充係を担当していたのですが、思うに、在庫管理とのかかわりは、このバイト経験が最初といえるかもしれません。完全防寒装備で冷蔵庫の中に入って、補充陳列作業をするのですが、1回の入室作業が終わると眉には霜がつもり、手はかじかんでしまい、しばらくは動けなくなります。そのため、いかに最適なタイミングで補充作業を行うかという、在庫管理問題とスケジューリング問題を複合したようなことに頭を使っておりました。

 

待機時間にはバックヤードで店長さんから、いろいろなお話を聞いたりして、とても良い人生勉強になりました。お若い店長さんでしたが、深夜にコンビニにたむろする若者からも慕われる立派な方でした。その後、コンビニやスーパーの店員さんや店長さんたちとすぐに仲良くなることが多かったのは、この時の経験が活きているのかもしれません。

 

 

【恵方巻き問題の現場確認】

 

こんなわけで、いつも仲良くしているコンビニ・スーパーの店長さん3人に早速、お話を聞きに行ったところ、今年の恵方巻きは大量に廃棄をしなくて済んだのですよという答えが返って来ました。ローソンさんとは、先の経産国家プロジェクトで仲良しになり、お互い本社が近いこともあってランチ会などもやっていた関係でした。

 

その店長さんが開口一番、「廃棄はゼロでした。欠品の苦情もありませんでした」と胸を張っていうのです。新店舗なのでほかのコンビニの動向やこれまでの経緯は分からないということでしたが、自店の仕入れ数は見事に的中したようです。業界情報としては、今年はスーパーが生産量を絞り込んだので、大量廃棄はなかったということでした。

 

スーパーの動向も知りたく、いつもタイムセールのお惣菜を酒の肴に買って、お世話になっている地元スーパーを訪ねたところ、店長さんは、いつもは値引きタイムセールがうまく働いて、食品廃棄ロスはないのだけれど、今年の恵方巻きはちょっとだけ捨てちゃいましたと残念そうにしていました。ただ、その数を聞いたところ、本当にわずかでしたので、誤差範囲と認定できます。食べ物を捨てるのはよくないことだという意識が徹底していて、それでタイムセールをきちんとされていたわけでしたし、このお店は、バックヤードで調理をするので、製造販売一体運営でも在庫ゼロにはならない事例といえます。 次に訪れたのは一番馴染みのセブンイレブンですが、ここも今年は廃棄ゼロで済んだということでした。

 

つまり、恵方巻きの食品大量廃棄問題は、実は今年に限っては存在しなかったようです。ただ、私の身近な事例に限られますので、本当に今年は恵方巻きの大量廃棄がなかったのかというと、断定はできませんので、直接相対してのお話内容と、店内現場の印象から判断したところを以下に述べたいと思います。

【大事なのは信頼できるコミュニティづくり】

 

3店舗に共通するのは、店長さんも店員さんも皆がお客様に良質の食べ物を安心して食べてもらいたいという気持ちを持っていることでした。最後の事例のセブンイレブンの店長さんは、自らの身体で、20Kgのダイエットを宣言し、その過程を公開し、見事に達成したのですが、自分のお店のお弁当を毎日2回食べたうえでの、ダイエットだったというのがすごいです。昔の姿を知っていましたので、確かにスッキリしたことが確認できました。

 

成功の決め手は商品すべてにカロリー表示があることで、1日1,500キロカロリーにコントロールできたのはこのおかげだということでした。セブンイレブンは食品などの添加物を極力排除することに努めているので安心だよ!ということを、自らの身体を使ってお客様に示してくれたと言えます。

 

このように、恵方巻の廃棄ロスをなくすには、食の安心を目指すコミュニティを選択できるシステムをつくるというのが、私の回答となります。さらに、欠品粗利保証とか、3分の1ルールとか、返品商慣習などといったサプライチェーン体制に起因する問題には、適正在庫コミュニティづくりという構想があります。これらのコミュニティ構想については、そのキーテクとなる民間通貨との関連で、後ほど紹介したいと思います。

第20回(通算78回)生産活動の最小単位は1日分

 

【生産サイクルの適正値】

一昔前に「週次生産」が流行し、その後は毎日MRPなどの多頻度需給化が生産管理の世界では潮流となっているように思えます。

なぜ多頻度にしたほうがいいのかというのは、その方が在庫削減が進むからという点にあったのですが、ここへきて在庫削減の行き過ぎへの反省・反動から、需給調整サイクルの適正値への関心が増えているように思います。

 

今年の初めに時間サイクルについて面白い考察をしたので、まずはこれについて紹介します。

 

「コスモクリーナー=放射能除去装置」を開発できないものかと大真面目に研究活動を進めていることは、この連載でもたびたびご紹介していますが、その技術の種が一つ見つかり、それが時間サイクルの素となる振動数に関わることなのです。共振現象を利用することで、 小さなエネルギーで放射性物質を振動させて瓦解させ、より安定な原子に移行させようという発想なのですが、次のように考察を進めました。

 

宇宙には、生命誕生の遥か以前から音楽が流れていると言われますが、 この音楽=振動にわが身をさらして、自ら共振し、増幅しようということを考えました。

宇宙に流れる太古からの音楽とは何か? それはおそらく、万物を共振させることのできる振動で、 数字でいうと「1」の音ではないかと思っています。 あらゆるものの固有振動数に共通する公約数になる振動数はなんだろうと考えるとそれが1だからで、1はすべての数を割り切ることができるからというわけです。

 物理学の世界では、プランク周波数という概念があって、 それは最小の時間長さ=プランク時間の逆数なので、 あらゆる数の約数である数字1の振動数に近いものと考えられます。そして、このプランク周波数の値は、1.855×10 ₄₃とされています。途方もなく大きな数なので、この振動を、筋肉や機械の力で起そうと思っても無理な話なので、 元からある振動に共鳴しちゃえというわけです。この振動=音楽の流れる場所は、おそらく、仏教の唯識論、あるいはユングの共同無意識仮説で示されるような場であると思います。

その場、これを私はクラウドと呼ぶことにしますが、こことのパイプとなって、宇宙の音楽=振動をこの世界に伝えること、これが、コスモクリーナー開発戦略の骨子です。

パイプ役になれる人をたくさん増やせるように、その技術・方法を確立して、わかりやすく伝えること。この活動は、適正在庫の活動と重なる部分が多くありますので、本年以降の私の活動目標はこちらになっていくだろうと予感しています。たとえば、プランク周波数を手掛かりに、発注サイクルの適正値を定める理論の解明等などなどです。

 

以上のようなことを年初に考えたのですが、話を生産サイクルに戻して、生産活動における「1」は、1年なのか1ヶ月なのか1週間なのか1日なのか・・・と考えていくと、それはやはり1日ではないかと思います。地球人たる人間が行う活動であって、地球上で行うという前提をおくと、時間の起源たる日の出/日の入りが根本になるだろうと思うからです。

また、これが需給調整サイクルということになると、需要サイクルも合わせて考えることになりますから、商取引のサイクルも考慮する必要が出てきます。

【生命通貨の最小単位】

以前この連載で「生命通貨」と称して提案した、現在の基軸通貨を、生命量=生涯時間数に置き換えようというアイデアがありましたが、この通貨の最小単位を考えると、やはり1日分に行きつくように思えます。

実は、もし生命通貨を実現できたとしたら、その単位は「momo」にしようと考えています。ミヒャエル・エンデの童話『モモ』に由来します。基本単位がmomoで、補助通貨単位はまだ未定です。戦前の、円と銭のような関係とお考えくださいませ。

そしてこの生命通貨は、万人がほぼ公平に持って生まれてくる生涯時間数、つまり生命量となりますので、地球に生まれて生活する生きものとしての活動サイクルに基づく単位とすべきであると考えたわけです。

とすると、時間の起源たる日の出/日の入りのサイクルで、朝起きてから寝るまでの間で働いた時の賃金とするのが最も自然ではないかと考えました。つまり、1momoが日給相当の価値を持つことになります。

人と人の間の価値の交換を仲立ちするのが、通貨本来の機能であるとすれば、1人の人が1人の人に1日かけて、自分の時間を提供するというのが、持続可能で自然なサイクルであると考えたわけです。

 

【星の王子さま】

サン=テグジュペリ作の『星の王子さま』に出てくる王子様の出身星はとても小さいので、地球で1回日の出と日の入りがある間に、44回も夕陽を見ることができるという話をふいに思い出しました。

星の王子さまはこうも言っています。

「星がきれいなのは、星のひとつに花がかくれているからだよ」

「砂漠がきれいなのは、どこかに井戸をかくしているからだよ」

心を惹かれるからきれいに見えると考えると、コスモクリーナーや生命通貨デバイスの開発に夢中になるのは、そこに花や井戸がかくれているからだろうなと思います。ものづくりに夢中になるのもきっと同じではないでしょうか。

 

第19回(通算77回)何度でもやり直せるという安心

【時間の起源はオタク?】

 

パソコンはおろか、電気もなかった時代のオタクは何をやっていたのでしょうか。

 

きっと、空を見ていたのだと思います。太陽が朝昇り夕に沈み、また翌朝昇る。 月が満ちて欠ける。 季節の星座が繰り返し巡ってくる・・・。現代でも、こんなに面白いものはないですからね。

 

このことから、私は”時間”という概念は、オタクたちが生みだしたのだと思います。つまり、時間の起源は、日が昇って沈み、また昇って沈むという繰り返しに気づいた発見にあると考えるわけです。すると、時間とは過去から未来に向かって一直線に進んでいくのではなく、ぐるぐると回っていくものだということができます。

 

このような時間概念からの論理的帰結が、「なんどでもやり直せる」という事になります。今日がだめでも明日がある。今年はできなかったけど来年はきっとうまくいく。今生では結ばれなかったけど来世ではきっと・・・ と考えることで、生きることがずいぶん楽になります。

 

では、ものづくりの世界ではどう考えたらいいのでしょうか。品質不良や大幅な納期遅れを出してしまったら、顧客や市場そのものを失うことになりますから、やり直せばいいやとは思えませんね。しかも、手直しが多発するとコスト増を招く結果となりますし、納期遅れの原因にもなりますから、1発合格が理想ということになります。

しかし、脳科学の知見によれば、失敗してはいけないと強く思いすぎると、失敗率は上昇するのだそうです。なので、何事も「だめだったらやり直せばいいや」と考えられる余裕がある方が、結果的に成功率は高くなるわけです。

 

【生命は循環しながら続いていく】

顧客を失い、市場まで失ってしまったら、商品寿命は尽きることになります。つまり、生命が失われたというわけです。一つの商品だけでなく、会社全体の売上が止まったり、コスト増に追いつかない状態が長く続くと、経営が立ち行かなくなって、やがては倒産、つまり会社としての生命の終わりとなります。人の一生でも同様で、生きていれさえすれば何度でもチャレンジを繰り返すことができますが、命を失ってしまったらそこでお終いです。

 

ここまで、命の終わりという言い方をしてきましたが、生命とはそもそも何なのかを、この連載で考えたことがありました(2017年11月号参照)。その時再定義した生命とは、「循環しながら続いていくもの」というものでしたが、ここで先の循環時間とつながってきます。

親の個体が死んでも子供につながって続いていく、あるいは牛一頭の生命は途絶えても牛肉を食べて生命を維持する人間につながって続いていくというのが“循環”という言葉の意味するところですが、この循環と、日の出と日没の繰り返しを同じ事であると捉えるわけです。

すると、生命=時間という等式が成り立つことになるのではないかと思います。

【流れを止めない適正在庫】

時間、すなわち生命が続いていくことで生まれる流れをモノの流れとして捉えたとき、流れを途絶えさせないためには、要所要所に適正量の在庫を配置することが必要になります。さらに、これだけでなく流れを積極的に生み出すためにも、局所的な過不足を作り出すことが必要とされますが、これも各所の在庫配置バランスによって実現可能となります。マーケティングの基本は、局所的な過不足を人工的につくり出すことにあると言うこともできるわけです。つまり、3ヶ月後に15Kg減量に成功してスマートになった自分自身のイメージと現状の姿とのギャップを生み出すことで、減量サポートというサービスの売上増を狙うという訳です。こう考えて、テレビや雑誌に出てくるカッコイイ美男美女は、現実世界にはまれなマーケティングツールなんだと理解するとコンプレックスが和らぎませんか?(笑)

 

また、先述したようにやり直しが許されるという心の余裕は、不具合が出たときに後工程を止めない為の安全在庫を保有することで生まれます。また、工程能力も歩留まりも変動します。最終需要も増減するため、流れの速さは常に一定にはなりませんから、中間在庫を適正量保有することで工場の中に流れがつくることができます。工場の外に目を向けて、サプライチェーン全体で考えてもしかりです。

 

適正在庫という考え方は、「在庫は悪だ」に対するアンチテーゼとして示したのが始まりでした。在庫そのものが悪ではない、適正量管理ができないことこそが問題であると。そして、在庫の起源が農耕生産によって蓄えることができるようになった食料在庫であることから、在庫自体は安心のよすがとなる善なるものであるという主張をするようになって今日に至ります。

 

そして、最新の適正在庫の考え方は、流れを止めないために必要とされる最小限の在庫量であるというところまで進化しました。ここで、流れを止めないということの意味を深く考えると、やはり安心のよすがということに行き着くことに気がつきます。つまり、流れが止まらずに続いていくことで、何度でもやり直すことができるということが、安心を生み出すと考えられるからです。

 

太陽が夕に沈んでも、明日の朝には必ずまた日が昇るということ、つまり明日にまたやり直せるということが、一番の安心のよすがであり、その繰り返しを支える技術が、流れを止めない適正在庫の技術なのです。

 

第18回(通算76回)さまざまな確率推論を活かす

【既成概念を脱ぎ捨てる】

夏の間だけですが、葉山にある研究所では、ひとりになってパンツ一丁でプログラミングをしていました。適正在庫を計算するコンピュータプログラムは、実はこうして生み出されていたのです。

ソフトウェア開発の仕事はアイデアが大切なので、従来になかったような斬新な発想をするためには、既成概念を脱ぎ捨てる必要があったからです。服を脱ぎ捨てるというカタチから入っていこうとしたわけです。

考えてみれば、私たちは生まれてからずっと、いろいろな衣服やら鎧やらをまとっていたように思います。子供の頃は、親や学校の先生からよい子になるようにしつけられ、会社に入れば理想の社員像を示され、家庭ではよき父母として振る舞うことを求められ、という具合にいつもどこかで「あるべき姿」を示されて、無意識に他人から与えられた理想を目指していたように思えます。

学術分野でも、受験の際の無駄なく短時間で正解に辿り着く効率的思考法に始まり、専門分野の常識的発想から逃れられなかったり、自分自身の成功体験の枠の中でしか発想できなかったりということが多いように思います。

こういうときに、いかに既成のとらわれから解放されて自由な発想をするかが重要なのですが、オフィスで机に向かっていてもよいアイデアが生まれるわけではないことなど皆さんご承知の通りです。外を散歩したり、瞑想したり、音楽を聴いたりとその人その人でさまざまなやりかたがあるわけです。

 

【プロダクションルール】

服を一枚一枚脱いでいくように、自分の考え方のクセをはいでいく。あるいは、大前提として疑ってみたこともないような事実認識を洗い直してみる。知的な作業においては、このようなプロセスが必要不可欠となります。

事実も不確実、考え方そのものも不確実。こんな思考の進め方を、多くの経営者は日常的に行っています。確実な事実情報を基に、確実な方策を実行するだけなら誰でもできるわけですから、当然といえば当然です。そして、生産管理の現場では、ミクロなレベルでのマネジメントが同様に行われているといってもいいでしょう。何をいくついつ、つくるのか調達するのかというのは、不確定な情報を基にする意思決定なわけですから、生産管理者というのはまさに工場現場の経営者なわけです。

 

この意思決定においても、どのように考えを進めるのかという方法を自覚することが大切になります。

 

私は、学生時代に覚えた麻雀で身につけた経験則を、社会人になってからのAI研究で編み出した技術で手法化したやり方で判断しています。AI研究といっても、今はやりのディープラーニングではなくて 、第2世代のエキスパートシステムです。故障診断等で専門家が持っているノウハウを IF~THEN~ という形式のプロダクションルールで記述し、これをたくさん集めたルールベースを使って推論エンジンで原因を推測するというシステムのことをエキスパートシステムといいます。

 

ここで、IFの後の「~」には、「熱がある」とか「異臭がする」などといった事実がくるのですが、この事実が本当かどうかを「本当である確率60%」などといった真偽確率を付けて表し、さらに、個々のプロダクションルールにも、その判断ルールの確からしさの確率を付けて、それで、推論エンジンを動かすわけです。 わかりやすい例でいうと、「風が吹けば桶屋がもうかる」というプロダクションルールの信憑性確率が80%で、明日風が吹く確率が50%だったら、80%×50%=40%が「明日に風が吹いて桶屋が儲かる確率」であるということになるのです。 その後、適正在庫理論の研究で磨いた確率分布を合成する技術も使って 真偽確率を確率分布で捉えるように改良をすすめて、今日に至っています。

ただ、いつもこの手法に則って、真偽確率付きの事実と信憑性確率付きプロダクションルールを列挙して、推論をしているかというとそうでもなくて、多くの場合は暗算をするように、頭の中で推論を進めます。だんだん面倒くさくなって、途中処理をすっ飛ばして、直感で答えを出すことも多いのですが、こっちの方が優れた解答になることも多くなってきました。

【アンサンブル予測の有用性】

気象庁の技官の方からアンサンブル予報という気象予測手法を教えていただきました。予想精度の向上した気象情報を用いることで、食品の需要予測を用いることで、食品の需要予測を上げて食品廃棄を削減しようとする活動の中のことです。私からは、サプライチェーンマネジメントやロジスティクスの技術を提供し、気象庁・気象協会からは気象予報に関する情報提供をいただいて、研究活動をすすめたわけです。

最新の気象予測では、スーパーコンピュータを使った物理現象のシミュレーションを行っており、そのシミュレーションの初期状態として、複数種類の前提を置きます。つまり、前提事実がひとつに確定していないシミュレーションであるわけです。

これで、シミュレーション結果を折れ線グラフにプロットしていくと、時間軸方向に複数線の折れ線が幅を拡げながら伸びていきます。その幅の大きさから、予測値のバラツキを求めて気象予報を出すのだそうです。

流れを止めない適正在庫の算出には、このアンサンブル予報にヒントを得た技術が使われています。安全在庫の量を決めるのに、ばらつきの大きさが効いてくるのはよく知られていますが、そのばらつきの予測を、複数の種を蒔くことで行う技術であるとご理解下さい。複数の種のことをシナリオと名付けて、「過去延長シナリオ」、「楽観シナリオ」、「悲観シナリオ」などといった将来の入出庫予測を用意することで、過去データがなくても、需要予測や適正在庫計算ができるようになったのです。

 

 

 

 

第17回(通算75回)民間通貨でお金の支配権を取り戻す

 

【民間通貨(NGC)時代の到来】

中国政府がビットコイン取引所を非合法化し、米モルガンスタンレーのCEOがビットコイン取引をしたトレーダーを解雇して、ビットコイン相場が急落したと思ったら、当のモルガンスタンレーがビットコインを安値で購入していたことが発覚したりと、仮想通貨の話題が絶えないようです。仮想通貨はその後、暗号通貨に呼び方を変えましたが、私は最終的には民間通貨(NGC :Non Governmental Currency)という言い方に落ち着くと思います。現状のドルやユーロや円、元なども非兌換通貨である点でその本質は仮想通貨であるわけですし、暗号通貨という表現では電子マネーの決済技術面しか表現できていないからです。一方、これまでの通貨のことをレガシー通貨と呼ぶのが最適のように思われます。

民間通貨は、現在、世界全体で数千種類発行されているそうです。いずれ淘汰が進み、種類が限られるようになったとしても、実体経済を回す活動を担う健全通貨と、投機対象にされる不純通貨に分かれることが予想されます。先のビットコインは総発行枚数に上限が設けられているために値上がり期待で購入する投機対象になってしまっているように思えます。21世紀の経済市民は民間通貨を選別する能力も必須になりそうです。 とはいっても、民間通貨の選択は、実は既に始まっています。Edy、Suica、waonなど、電子マネーの普及が急速に進んでおり、それぞれ一長一短のあるなかからどれを選ぶかという選択眼が必要になっているからです。これらは、今はまだレガシー通貨に紐づいている電子マネーの地位にとどまっていますが、賃金の支払いに使われるようになる頃から、独立した民間通貨に発展する可能性があります。バイト店員さんの賃金支払いなどから始まる可能性が高いので、waonやnanacoといった流通系電子マネーが先陣を切るのではないかと密かに予想しております。

個人的な趣味で言うと、waonは支払いタッチの際の鳴き声「わおん」がとても可愛いので、一番の期待の星です。電子マネーの先陣を切ったエディには「ちゃり〜ん」という素敵な音があったのに、その後に巨大化したSuicaは味気ない「ぴっ」だけなのが不満です。

人それぞれ、ファッション品を選ぶように好みの民間通貨を選ぶような時代が訪れると、民間通貨同士の競争が始まり、同時に民間通貨同士の合従連衡により相互乗り入れも進められて、利便性が高まるのだと思います。

そして、大切なのはその課程で人類が主導権を取り返せるチャンスが訪れるということです。お金というのは、人類の発明した最大の人工物ですが、いつか人間の方がお金に支配されるようになったように思います。民間通貨は、それを逆転させる可能性を生み出す発明なのです。

【” 経済的シンギュラリティ”とは】

シンギュラリティとは、人工知能の進化速度が人類の進化速度を超える特異点のことで、今世紀中に訪れると言われています。私は、これより早く経済的シンギュラリティが訪れるのではないかと思っています。政策研究大学院大学名誉教授、東京大学名誉教授の黒川清氏によれば、トータルキャピタルがトータルGDPをはるかに超えてしまっているのだそうです。これはつまり在庫論的に言うと、在庫月数12ヶ月以上の超過剰在庫ということになります。 通常こうなると、商品寿命は終わっていることが多いようです。

つまり、今の通貨は寿命が尽きかけているのかもしれません。考えてみれば貨幣は腐らないので、通貨が生まれて6千年の間ずっと、 発行済み総量が増え続けてきたのではないかと思います。

そして今、民間通貨がどんどん生まれており、レガシー通貨から民間通貨への富の移動が始まっています。この移動により、一方の残高が通貨の適正量に到達する時点が、経済的シンギュラリティということになります。実体経済を回している活き金の避難が終了すると、隠匿されていたレガシー通貨が短時間のうちに価値を失う可能性があると考えるからです。

そして、この通貨の適正量は、流れを止めない適正在庫の技術を適用することで、通貨の適正量を計算することができるのです。目下のところ、計算に必要なデータを集める方法のフィールドワークをしているところであります。シンギュラリティの起こる時点を予測できることは、社会的に大きな意義のあることだと思いますので、大いに張り切っております。

【電子マネーの活用のススメ】

そして、張り切りついでに、ひとつ提案をしようかと思います。この連載のシリーズ1の第48回に「”momo・mo”構想」と題して、時間泥棒から時間を取り戻すための工学的なシステムデザインを示しましたが、その延長になります。途中、今年の春にメルマガにて「momo・mo作戦」という、プレミアムフライデーより月曜午前の出勤自由化のほうかいいよ!という提案も致しましたが、今回の提案は、より具体的で誰でも直ぐに実行できる方策となります。

 

<momo・mo宣言>

万国のマルチチュードよ、電子マネーを使おう!

マルチチュードというのは、インターネット時代の新しい民衆像を指す言葉ですが、まさにネット決済の電子マネー時代にふさわしい生活提案となっております。なぜこのような提案をするかというと、多くの人が電子マネーを好んで使うようになることで、民間通貨同士の競争が促進されます。すると、ユーザーであるネット民衆本位の姿にお金が健全な発達を遂げて、その支配権を我々人間の手元に取り戻すことにつながるからなのです。