第18回(通算76回)さまざまな確率推論を活かす

【既成概念を脱ぎ捨てる】

夏の間だけですが、葉山にある研究所では、ひとりになってパンツ一丁でプログラミングをしていました。適正在庫を計算するコンピュータプログラムは、実はこうして生み出されていたのです。

ソフトウェア開発の仕事はアイデアが大切なので、従来になかったような斬新な発想をするためには、既成概念を脱ぎ捨てる必要があったからです。服を脱ぎ捨てるというカタチから入っていこうとしたわけです。

考えてみれば、私たちは生まれてからずっと、いろいろな衣服やら鎧やらをまとっていたように思います。子供の頃は、親や学校の先生からよい子になるようにしつけられ、会社に入れば理想の社員像を示され、家庭ではよき父母として振る舞うことを求められ、という具合にいつもどこかで「あるべき姿」を示されて、無意識に他人から与えられた理想を目指していたように思えます。

学術分野でも、受験の際の無駄なく短時間で正解に辿り着く効率的思考法に始まり、専門分野の常識的発想から逃れられなかったり、自分自身の成功体験の枠の中でしか発想できなかったりということが多いように思います。

こういうときに、いかに既成のとらわれから解放されて自由な発想をするかが重要なのですが、オフィスで机に向かっていてもよいアイデアが生まれるわけではないことなど皆さんご承知の通りです。外を散歩したり、瞑想したり、音楽を聴いたりとその人その人でさまざまなやりかたがあるわけです。

 

【プロダクションルール】

服を一枚一枚脱いでいくように、自分の考え方のクセをはいでいく。あるいは、大前提として疑ってみたこともないような事実認識を洗い直してみる。知的な作業においては、このようなプロセスが必要不可欠となります。

事実も不確実、考え方そのものも不確実。こんな思考の進め方を、多くの経営者は日常的に行っています。確実な事実情報を基に、確実な方策を実行するだけなら誰でもできるわけですから、当然といえば当然です。そして、生産管理の現場では、ミクロなレベルでのマネジメントが同様に行われているといってもいいでしょう。何をいくついつ、つくるのか調達するのかというのは、不確定な情報を基にする意思決定なわけですから、生産管理者というのはまさに工場現場の経営者なわけです。

 

この意思決定においても、どのように考えを進めるのかという方法を自覚することが大切になります。

 

私は、学生時代に覚えた麻雀で身につけた経験則を、社会人になってからのAI研究で編み出した技術で手法化したやり方で判断しています。AI研究といっても、今はやりのディープラーニングではなくて 、第2世代のエキスパートシステムです。故障診断等で専門家が持っているノウハウを IF~THEN~ という形式のプロダクションルールで記述し、これをたくさん集めたルールベースを使って推論エンジンで原因を推測するというシステムのことをエキスパートシステムといいます。

 

ここで、IFの後の「~」には、「熱がある」とか「異臭がする」などといった事実がくるのですが、この事実が本当かどうかを「本当である確率60%」などといった真偽確率を付けて表し、さらに、個々のプロダクションルールにも、その判断ルールの確からしさの確率を付けて、それで、推論エンジンを動かすわけです。 わかりやすい例でいうと、「風が吹けば桶屋がもうかる」というプロダクションルールの信憑性確率が80%で、明日風が吹く確率が50%だったら、80%×50%=40%が「明日に風が吹いて桶屋が儲かる確率」であるということになるのです。 その後、適正在庫理論の研究で磨いた確率分布を合成する技術も使って 真偽確率を確率分布で捉えるように改良をすすめて、今日に至っています。

ただ、いつもこの手法に則って、真偽確率付きの事実と信憑性確率付きプロダクションルールを列挙して、推論をしているかというとそうでもなくて、多くの場合は暗算をするように、頭の中で推論を進めます。だんだん面倒くさくなって、途中処理をすっ飛ばして、直感で答えを出すことも多いのですが、こっちの方が優れた解答になることも多くなってきました。

【アンサンブル予測の有用性】

気象庁の技官の方からアンサンブル予報という気象予測手法を教えていただきました。予想精度の向上した気象情報を用いることで、食品の需要予測を用いることで、食品の需要予測を上げて食品廃棄を削減しようとする活動の中のことです。私からは、サプライチェーンマネジメントやロジスティクスの技術を提供し、気象庁・気象協会からは気象予報に関する情報提供をいただいて、研究活動をすすめたわけです。

最新の気象予測では、スーパーコンピュータを使った物理現象のシミュレーションを行っており、そのシミュレーションの初期状態として、複数種類の前提を置きます。つまり、前提事実がひとつに確定していないシミュレーションであるわけです。

これで、シミュレーション結果を折れ線グラフにプロットしていくと、時間軸方向に複数線の折れ線が幅を拡げながら伸びていきます。その幅の大きさから、予測値のバラツキを求めて気象予報を出すのだそうです。

流れを止めない適正在庫の算出には、このアンサンブル予報にヒントを得た技術が使われています。安全在庫の量を決めるのに、ばらつきの大きさが効いてくるのはよく知られていますが、そのばらつきの予測を、複数の種を蒔くことで行う技術であるとご理解下さい。複数の種のことをシナリオと名付けて、「過去延長シナリオ」、「楽観シナリオ」、「悲観シナリオ」などといった将来の入出庫予測を用意することで、過去データがなくても、需要予測や適正在庫計算ができるようになったのです。

 

 

 

 

第17回(通算75回)民間通貨でお金の支配権を取り戻す

 

【民間通貨(NGC)時代の到来】

中国政府がビットコイン取引所を非合法化し、米モルガンスタンレーのCEOがビットコイン取引をしたトレーダーを解雇して、ビットコイン相場が急落したと思ったら、当のモルガンスタンレーがビットコインを安値で購入していたことが発覚したりと、仮想通貨の話題が絶えないようです。仮想通貨はその後、暗号通貨に呼び方を変えましたが、私は最終的には民間通貨(NGC :Non Governmental Currency)という言い方に落ち着くと思います。現状のドルやユーロや円、元なども非兌換通貨である点でその本質は仮想通貨であるわけですし、暗号通貨という表現では電子マネーの決済技術面しか表現できていないからです。一方、これまでの通貨のことをレガシー通貨と呼ぶのが最適のように思われます。

民間通貨は、現在、世界全体で数千種類発行されているそうです。いずれ淘汰が進み、種類が限られるようになったとしても、実体経済を回す活動を担う健全通貨と、投機対象にされる不純通貨に分かれることが予想されます。先のビットコインは総発行枚数に上限が設けられているために値上がり期待で購入する投機対象になってしまっているように思えます。21世紀の経済市民は民間通貨を選別する能力も必須になりそうです。 とはいっても、民間通貨の選択は、実は既に始まっています。Edy、Suica、waonなど、電子マネーの普及が急速に進んでおり、それぞれ一長一短のあるなかからどれを選ぶかという選択眼が必要になっているからです。これらは、今はまだレガシー通貨に紐づいている電子マネーの地位にとどまっていますが、賃金の支払いに使われるようになる頃から、独立した民間通貨に発展する可能性があります。バイト店員さんの賃金支払いなどから始まる可能性が高いので、waonやnanacoといった流通系電子マネーが先陣を切るのではないかと密かに予想しております。

個人的な趣味で言うと、waonは支払いタッチの際の鳴き声「わおん」がとても可愛いので、一番の期待の星です。電子マネーの先陣を切ったエディには「ちゃり〜ん」という素敵な音があったのに、その後に巨大化したSuicaは味気ない「ぴっ」だけなのが不満です。

人それぞれ、ファッション品を選ぶように好みの民間通貨を選ぶような時代が訪れると、民間通貨同士の競争が始まり、同時に民間通貨同士の合従連衡により相互乗り入れも進められて、利便性が高まるのだと思います。

そして、大切なのはその課程で人類が主導権を取り返せるチャンスが訪れるということです。お金というのは、人類の発明した最大の人工物ですが、いつか人間の方がお金に支配されるようになったように思います。民間通貨は、それを逆転させる可能性を生み出す発明なのです。

【” 経済的シンギュラリティ”とは】

シンギュラリティとは、人工知能の進化速度が人類の進化速度を超える特異点のことで、今世紀中に訪れると言われています。私は、これより早く経済的シンギュラリティが訪れるのではないかと思っています。政策研究大学院大学名誉教授、東京大学名誉教授の黒川清氏によれば、トータルキャピタルがトータルGDPをはるかに超えてしまっているのだそうです。これはつまり在庫論的に言うと、在庫月数12ヶ月以上の超過剰在庫ということになります。 通常こうなると、商品寿命は終わっていることが多いようです。

つまり、今の通貨は寿命が尽きかけているのかもしれません。考えてみれば貨幣は腐らないので、通貨が生まれて6千年の間ずっと、 発行済み総量が増え続けてきたのではないかと思います。

そして今、民間通貨がどんどん生まれており、レガシー通貨から民間通貨への富の移動が始まっています。この移動により、一方の残高が通貨の適正量に到達する時点が、経済的シンギュラリティということになります。実体経済を回している活き金の避難が終了すると、隠匿されていたレガシー通貨が短時間のうちに価値を失う可能性があると考えるからです。

そして、この通貨の適正量は、流れを止めない適正在庫の技術を適用することで、通貨の適正量を計算することができるのです。目下のところ、計算に必要なデータを集める方法のフィールドワークをしているところであります。シンギュラリティの起こる時点を予測できることは、社会的に大きな意義のあることだと思いますので、大いに張り切っております。

【電子マネーの活用のススメ】

そして、張り切りついでに、ひとつ提案をしようかと思います。この連載のシリーズ1の第48回に「”momo・mo”構想」と題して、時間泥棒から時間を取り戻すための工学的なシステムデザインを示しましたが、その延長になります。途中、今年の春にメルマガにて「momo・mo作戦」という、プレミアムフライデーより月曜午前の出勤自由化のほうかいいよ!という提案も致しましたが、今回の提案は、より具体的で誰でも直ぐに実行できる方策となります。

 

<momo・mo宣言>

万国のマルチチュードよ、電子マネーを使おう!

マルチチュードというのは、インターネット時代の新しい民衆像を指す言葉ですが、まさにネット決済の電子マネー時代にふさわしい生活提案となっております。なぜこのような提案をするかというと、多くの人が電子マネーを好んで使うようになることで、民間通貨同士の競争が促進されます。すると、ユーザーであるネット民衆本位の姿にお金が健全な発達を遂げて、その支配権を我々人間の手元に取り戻すことにつながるからなのです。

第16回(通算74回)「流れを止めない適正在庫2.0」の定義 

 

 

【生命を新しく定義してみます】

宇宙ステーションでの新薬開発の為の実験動物を供給するビジネスを展開している方に、「生命とは何ですか」と尋ねました。

宇宙という科学技術のフロンティア現場では、どんな生命観をお持ちなのかを知りたかったからです。また、実験動物を生産するためにはクローン技術や遺伝子操作など、生命科学のフロンティアにも近く、更には実験後の処分の問題など、生命倫理の境界付近にもいらっしゃるだろうと思ったからです。

回答は「科学的な定義は、自己増殖するものということになっています」ということでした。

その場では、なるほどと納得したのですが、後になって、それではロボットに製造されるロボットは既に生命と言えてしまうのではないかと、さらに疑問が深まりました。人工物は除外するという条件を付け加えると、動植物の人工交配にはじまり、クローンや遺伝子操作までのどの段階から人工物であるという線引きをするのかという問題が生まれてしまい、疑問は疑問を生みどんどん深みに入ってしまいました。

質問をしたのはあるパーティの場であったのですが、ほろ酔い気分での帰宅電車の中で、ふと思いついたのが次の新定義です。

【循環しながら続いていくもの】

植物も動物も、子孫を残して生命が継続していきます。そしてその違いは何かというと、循環サイクルの長さにしか過ぎないのではないかと考えたわけです。つまり、人間のサイクルは80年位で犬だと12年、ゾウなら150年でしょうか。身近な植物の多くは1年サイクルですが、樹木だと何百年になることもあります。

この考えを上下方向に拡張して、ビッグバンからの数百億年サイクルで循環するのが物質生命で、霊的生命すなわち魂も輪廻転生しながら循環すると考えると、とても素敵なことになります。

そして、植物より動物の方が高級で、その中でも人類は最も偉いなんていう価値観が根拠を失います。その違いは単なる循環サイクルの長さの大小ということになるからです。植物実験は許されるけど動物実験は駄目、特に高等動物は絶対駄目という価値判断問題の延長に現れるマイノリティやコミュニティの内外(うちそと)問題などにも影響を与えることになり、震源がとても深い地震のような定義と言えます。また、遺伝子組み換え食品を避けるべき理由は、生命操作を悪とする倫理観からではなく、安全性の検証が不十分だからであるとすべきという見解も導かれることになります。

ここでも、流れを止めない適正在庫の理論の出番となります。つまり、循環しながら続いていくという“流れ”の定量化技術が活きてくるからです。

【競争の意義を再定義してみます】

競争するということについて考えてみると、生命は生存競争を繰り広げており、いま生きているということはその競争に負けないで生き残ってきたという事を意味していますし、企業間競争によって品質向上・生産性向上が進んだおかげで、今日の我々は豊かな生活を享受しているわけですから、自分をめぐる男たちの争いを嘆いて井戸に身を投げた”真間の手児奈”のように、競争自体を悪と考えるべきではありません。

とすると、「他人の競争」から利益を得る人々の存在を問題視する必要があるように思えます。なぜならそういう存在は自己の利益のために必要のない競争を助長することになるからです。競争を争いごとととらえると、軍需産業はその代表格と言っていいでしょう。販売競争を飯の種とするのは広告業界ではないかと思います。さらに広告収入に依存するメディア業界も仲間ということになります。

私は現場改善コンサルもやりますが、作業方法を改善して省力化をすすめて人件費節減でコスト削減し、売価低減によってライバル会社に勝つというというのはNGだけど、作業改善によって現場作業者を楽にして職場環境を良くしようというのはOKになるのかもしれません。

また、企業間競争による生産性向上の意味は、全世界の供給能力と需要量の逆転によって変わってしまいます。モノ不足の時代は競争による生産能力拡大が善でしたが、モノ余りの時代になると競争はライバルの蹴落としや、不要なモノを売りつけるマーケティングとして、マイナス側面が拡大するからです。

そしてここでも、需給バランスの局所的な偏りを測定する、流れを止めない適正在庫理論の登場となります。

【「適正在庫」の定義を再掲します】

 

本掲載の第9回で示した定義を、少し変えて再掲します。
<流れを止めない適正在庫2.0の定義>

モノの流れを止めない為に、サプライチェーン上の各点で最小限保有すべき在庫量。

※各時点で適正性在庫を保有した結果実現される在庫水準を適正平均在庫と称する。

この新定義によって、多すぎず少なすぎずという2軸判断から、流れを止めないという1軸に統一されたことで、在庫管理業務のダブルバインド状態が解決したのですが、もう1つ重要な内容が含まれています。

それは、“各点で”という表現に示されるように、適正在庫は時々刻々変化するという新概念です。つまり、出庫時刻の直前に出庫数だけ入庫されることを理想状態とする新しい考え方に基づく適正在庫になります。現実には出庫時刻も出庫数も事前にわかることがありませんから、その誤差を吸収する安全在庫が必要になります。

そして、必要とされる安全在庫数は入出庫の都度更新計算される必要があるということになりますから、コンピュータによる自動計算が必須となるのです。

 

月刊工場管理連載「適正在庫の広場」  勝呂隆男
http://www.tscinc.co.jp

第15回(通算73回)マイナス消費税という発想転換

【在庫の歴史観】

大昔のことですが、在庫をたくさん積み上げるためにどんどん生産拡大に励んだ時代がありました。その後、在庫削減の時代を経て、適正在庫の時代になりました。そして、これからは「流れを止めない適正在庫」の時代になります。

土地・建物の在庫である不動産の世界でも、同じような変遷がおこっています。昔、保有することがあこがれの的であった別荘の多くは、今や不良資産になって維持費や税金負担がかさむのに転売先も見つからないので二束三文で投げ売りされるようになってしまいました。

知識・情報も同様で、多くの情報が提供されることは良いことだという価値観の下、ラジオ・TVの多チャンネル化に始まり、インターネット・SNSの時代になってみると、世の中にはフェイク・ニュースが溢れてしまい、ホントにこれで良かったのかと多くの人々が疑問に思い始めています。人工知能(AI)についても、沢山のデータを与えて自力学習させればいいかというとそうでもないようだという気づきが始まっています。きちんと整理・整頓されたデータや、価値ある情報を与えないと、役に立たないどころか人類全体に害を及ぼすようなAIが出現してしまいそうです。

いちばん大切な人的資産についてはどうでしょうか?SNSの友達を増やすことで、つながり拡大を皆が競った時代はとっくの昔に終わり、自分にとっての心地よいSNSコミュニティづくりが大切だということに多くの方々が気づきはじめています。ただし、健全なコミュニティを維持するためには、新しい友達獲得と親交のなくなった旧友整理の両方が必要なようで、ここでも流れの維持が重要な方策となるようです。人口問題としては、先進国になると少子化が進みますが、これを緩やかな微増維持状態に持って行くことが重要なように思います。

 

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【make to stockを知っていますか】

「見込生産」に対応する英語は「MTS」ですが、何という言葉の略語なのかを知っている人は少ないでしょう。「make to stock」が正解で、今手元にある APICS Dictionary(TENTH EDITIO)の定義には、見込み生産の内容が示されているのですが、「make to stock」を直訳すると「在庫するための生産」になってしまうところが、今日の我々には奇異に感じられます。この英語の用語がいつ頃成立したのかまでは調べがつきませんが、おそらく在庫は大事な資産でありたくさん保有しようという考え方が支配的な時代につくられた用語ではないかと思います。

そもそも在庫に対する価値観は次のような変遷を辿ってきました。

①安心の源の誕生(農耕生活の開始)

②大切な財産(どんどん増やせ)

③在庫は悪だ(無在庫経営が理想)

④多すぎず少なすぎない適正在庫(均衡解の追求)

⑤流れを止めない適正在庫(システム最適化)

振り子が右に振れたり左に振れたりして段々真ん中に収束するように、在庫に対する価値観も段々と収束するように思えます。そこで、モノの在庫資産に対する価値観の変遷を辿ることで、資産全般の価値観変遷を考察しようと思います。

蓄えることができるようになると、まずは各人の欲望のままに「たくさんあることはいいことだ。とにかく生めよ増やせよ」という段階に突入します。これが競争をうみ、皆が頑張ることで世界全体の資産量が増えます。ところが、これがいきすぎて供給過剰の時代に突入すると、在庫資産はリスクになりますので、一転して「在庫は悪だ」という価値観に変わっていくわけです。すると、今度は各人がいかに少ない在庫でうまくやっていくかの競争の時代となります。これが、ついこの間までの「在庫削減の時代」です。けれども、これも皆が同じように在庫減らしに走ると、供給が滞って売上が伸び悩むだけでなく経済全体も縮小してしまい、皆が不幸に陥ります。目先の利く会社は、方向転換を既に始めていて、自社の在庫適正化に取り組んできました。そして、次の段階としてサプライチェーン全体の在庫資産最適化を模索し始めている。現状は、ざっとこんな感じでしょうか。各種資産に対する価値観の変遷の行く末も見えてきたように思えます。

【電子マネーの可能性】

システム工学的に見て、人類の発明した最も重要な人工物は「お金」ではないかと思います。このシステムがIoTによって今大きな転換期を迎えています。そこで、お金を在庫に見立てて、金融資産の価値観の変遷を考えてみたいと思います。

貨幣の誕生以来、ずっと「多ければ多いほど良い」という価値観で続いてきましたが、これが変わりつつあります。各人が自己の金融資産を増やすことについては、それでホントに幸せになれるのかという疑問はありますが、欲望を否定して禁欲を強いるのはかえってマイナスとなりますので、保留とします。大事なのは、世界の金融資産総量コントロールです。モノの在庫でも、生産能力の拡大によって供給過剰となった時点が転換点になりました。金融資産も同様ですが、現在のマネーはドルも円もユーロも元も金兌換制を敷いていない点において全て仮想通貨であり、供給量に物理的な制約がありません。ですから、資産量コントロールによって流れを止めないことが重要になるのです。

どうやってコントロールするのかというと、これまでは金利の上げ下げと税金でコントロールすることが中心であったように思います。日本経済が長らく患ってきたデフレはお金の流れが滞ることですから、金利の上下だけでは制御しきれなかったことがうかがえます。金利は在庫量の大小で決まるので、マイナス金利でも効果は薄かったようです。消費税はお金を使えば使うほど資産がマイナスになりますから流れをつくる意味では逆効果です。さて、どうするか、と悩んでいたら、かつて銀行で融資を担当していた妻が、「電子マネーのポイントは使えば使うほど増えるわよ」とポツリ。なるほど、多くの電子マネーはお金を使うとポイントがつくシステムを導入しています。マイナス消費税とでも称すべき大きな発想転換です。

さらに電子マネーになれば、使用期限を定める等自在なコントロールが可能になります。そして、そのコントロール技術の核になるのが、「流れを止めない適正在庫」なのです。

 

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第14回(通算72回)未来の基軸通貨

【ゾウの時間、ねずみの時間】

「自分の身体に合わせて呼吸するのではなく 呼吸に合わせて身体を調整せよ」

これは、スキンダイビングのインストラクターに教えていただいたことですが、その方いわく、本で読んだ知識ではなく、自身のダイビング体験から自然と習得したノウハウだということでした。

実際、スノーケルをつけて海に潜って泳いでいると、月の引力による潮の満ち引き、太平洋の彼方からのうねり、沖の漁船からの波、あるいは側にいる仲間からの水流など、流れに合わせて呼吸が進むことが分かります。その呼吸に合わせて身体を整えることで、心身が楽になり無理なく潜水できるのです。

この波のサイクルですが、海辺で観察すると、平均して1分間に18回押し寄せていることが分かります。そして、人間の平常時の呼吸数もこれと同じであることを最近になって知りました。呼吸というのは、地球のリズムに合わせて行われるものなのですね。

この呼吸数を4倍すると72になるのですが、この値は、平常時の人間の1分間の心拍数です。そして、ほ乳類の生涯心拍数は20億回で一定だという仮説があります。『ゾウの時間、ねずみの時間』(本川達雄薯)という本で知りました。ゾウのように身体の大きな動物は心臓の鼓動もゆっくりなので長生きをし、ねずみのように身体の小さい動物は鼓動が早く短命なのだという説明です。

20億回を平常時の人間の心拍数72で割った値を、365で割り、それを24で割り、更に60で割り算すると、約53となりますから、織田信長の時代に人生50年と言ったのは正しいのかなとも思えますし、眠っている時間の心拍数低下や個体差で補正するともっと正確な値になるのかなとも思えますが、標準寿命が生涯心拍数で決まるというのは、とても魅力的な仮説です。

【スマートウォッチに注目】

私のエンジニアとしての出発点はIE(インダストリアル・エンジニアリング)なので、ストップウォッチにはこだわりがあります。標準時間設定のための時間測定に使うのは、1分間を100分割するデシマルウォッチです。時間を集計するのに、そのほうが計算が楽なからですが、IEr(IEエンジニア)はやっぱりデシマルウォッチだろ〜って今でも思っています。新入社員の頃に、それまでのアナログ式ウォッチの先輩お下がりではなく、最新デジタル式の新品を買ってもらったときはとても嬉しかったです。独立時に個人で購入した、SEIKO S039-4000は、今でも宝物です。

というわけで、最近のスマートウォッチはとても気になります。スケジュール管理やメール受信機能がついているくらいのときは全く魅力を感じなくて、アスリート向けに心拍数や体温、歩数などの測定機能が付加させるようになって注目するようになり、最近の決済機能付モデルの登場でやばくなりました。私の要求スペックからすると、更に長期間のライフログ機能がついてくると、いよいよ試してみようかなの段階になります。

冒頭のスキンダイビングの趣味だけでなく、サーフィンやカヌー、トレッキング、トレラン、登山も大好きなアウトドア派・自然派ではありますが、一方で、パソコン小僧でもあり、ITガジェットコレクターで、人類のサイボーグ化にも否定的ではありません。ジェミノイドFという美人アンドロイド女優に、恋してしまった経験もあるくらいです。

【生命通貨の概念とその利用方法】

個人的な印象ですが、仮想通貨と呼ばれるビットコインなどの基礎技術であるブロックチェインとIoTの結合によって、新しい貨幣制度に移行する時代が近づいているように思えます。経済の仕組みが大きく変わりますので、われわれモノづくりに携わる者にも影響は大きいと思います。貨幣の機能には、支払、価値尺度、蓄蔵、交換手段の4つがあり、全ての機能を備えた貨幣は文字社会の誕生以降という事ですので、だいぶおおざっぱではありますが、次のような歴史観を持つことができます。

250万年前 人類誕生

3万年前 農耕開始=在庫の誕生

6千年前 通貨の誕生

2千年前 近代宗教の誕生

400年前 近代科学の成立

現代 適正在庫2.0(笑)

XX   生命通貨の誕生

ここで、「生命通貨」と称しているのが私の提案で、現在の基軸通貨を、生命量=生涯時間数に置き換えようという発想です。在庫の事を研究していると<腐らない在庫>というのが、自然の流れに反する諸悪の根源になっているように思えます。在庫は悪だ、ではなく、腐らない在庫は悪だ!というわけです。

腐る、つまり有限の寿命があって、万人に等しく分け与えられているものは何かというと、時間であり、生涯時間ということになります。適正在庫の基礎理論たる「時間場の理論」によれば、時間は相対的なもので、存在物それぞれが時間を持つことになります。先に述べたように、生涯鼓動数20億回が各人の持つ時間ということになりますから、スマートウォッチで測定された鼓動回数を基に、ライフログ機能を付加することで、ある能力を習得するために費やした時間総量までを含めての価値尺度計算機能を持たせ、その支払、交換、蓄蔵までをスマートウォッチで行うというアイデアです。メディアによる拡散効果と能力習得時間までをカウントすると、それが「付加価値」の新定義になります。

以上のアイデアを具現化するための、技術が適正在庫2.0であり、基礎理論としての時間場の理論というわけです。電機メーカーの凋落や電気自動車の戦略ミスで日本経済の行方に暗雲が漂っていますが、もしかしたら、適正在庫の技術から新しい未来が切り開かれるかもしれませんね。

 

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