第28回 製造業でないところの在庫管理

演劇プロジェクトの疲れを癒やそうと、室戸岬にあるスパリゾートを訪れました。海洋深層水を活用したタラソテラピーを行う施設で、マッサージされながらセラピストの方とお話ししていたら、在庫管理の話になってしまいました。

僕を担当したセラピストさんは、家では主婦として節約生活をきっちり行っているしっかり者なのですが、会社の仕事にムダが多すぎると気がついて、発注業務を改善しようという提案プレゼンを翌週に控えていらっしゃったのです。支配人と本社スタッフの前で、パワーポイントを使ったプレゼンテーションをするというので、「何を提案するの?」と尋ねたら、会社の経営改善にかかわる重大提案で、発注管理をちゃんとすることで在庫を減らして、お金を節約することだと胸を張っておっしゃるのです。

思わずニッコリしてしまいました。管理技術の専門教育を受けたわけではないのに、主婦経験と現場感覚から在庫を減らすことが経営改善に役立つと気がつく着眼点の素晴らしさ!それからは施術を受けているのも忘れて、発注点の決め方やリードタイムという考え方などをとうとうと説明していました。このセラピストさん、今では拙著「適正在庫のテクニック」の熱心な読者になられています。

筆者の在庫管理業務とのかかわりは、製造業の生産管理からの発展で始まったものですが、最近はこの例のように、製造業以外のサービス業や流通業の方々とのご縁が広がっています。 ひところ、製造業の管理技術に他産業も学ぼうという活動が盛んに行われていました。それだけ、モノづくりに関わる人々の管理技術・改善技術のレベルは高かったわけですが、こと在庫管理に関していうと、そうでもない例に遭遇することが多くなりました。

現品管理のようなモノに即した活動については、皆さんのように工場の方々に一日の長があるのですが、発注・調達業務のような間接業務に近いところでは、流通業の方々の技術レベルには非常に高度なものが見られます。そのような他業種の優れた技術を、工場管理に携わる方々にもお伝えしたいと思います。ここで紹介するのは、大阪にある商社の例です。

皆さんにもなじみの深い工業部品の卸を行うB2B企業で、数十年前からIT投資を積極的に行い、独特の受発注システムを構築されています。どこが特徴的かというと、システム運用を始めてから数十年分の取引データをすべてデータベース化して蓄積しており、そのトランザクションデータを瞬時に検索できるというところです。

製品寿命が長いという特性を活かしてのシステム構築ですが、過去数十年の間に、どの製品がいつどこの顧客向けにいくつ売れたのかというデータが個別取引単位で残っていて、それを受発注担当者の机上のPCから縦横無尽に検索・集計・分析して、調達発注を行っています。

現場の担当者に聞くと、顧客1社1社の購買の仕方のクセまで把握されて、需要予測を行っているのだそうです。また顧客ごとに、需要拡大期なのか縮小期なのか、あるいはライバルが出現したかどうかなどをデータから読み取り、必要であれば営業マンに連絡して動向を確認してもらうなどの、情報活動の司令塔の役割を受発注担当者が担っており、それを支える情報システムが整備されているのでした。

一方、調達活動も、取引先ごとの納期遵守率や納期実績の把握はもちろんのこと、取引先メーカーの在庫状況まで推測して、品薄になってきたら早めの確保に走るなどのアクションを行っています。これも取引のトランザクションデータ活用システムがあればこそのことです。

調達と出荷の間に位置するのが在庫です。この会社では、教科書に載せたいくらい模範的な発注点管理を行っていました。発注点の設定は過去の出荷動向と将来の需要予測、そして調達リードタイムの動向を総合的に勘案して熟練の技で決めていましたので、ベテランと初心者の間や、心配性の方と楽天的な方との間などで、だいぶバラツキがありました。

そこへ、我がAPIM(適正在庫算出システム)を導入して、発注点設定業務の標準化・高度化と自動化を行ったのです。導入に先立ち、APIM計算値の徹底的な妥当性検証を行い、現場全員の信頼を勝ち得てからのスタートでした。DLL版のAPIMLIBを受発注システム側から直接コールして、バックグラウンドで自動的に発注点の値をメンテナンスする仕組みが出来上がったことで、発注点設定業務が大幅に軽減されて顧客や取引先の動向をみる余裕が拡大し、さらに発注点設定精度も向上したことで在庫適正化が実現し、結果的に大幅な在庫削減にもつながりました。

ということで、もともと優れた在庫管理を行っていたところへAPIMを導入して、鬼に金棒となった事例でした。こと在庫管理に関しては、他業種から学ぶことが多々あります。

第27回 役者デビューその後

劇団COLLOLの舞台『サリー・キャロル』で、無事に役者デビューを果たしました。連日満員の大盛況で、本誌の久保編集長にもお越しいただくなど、大勢の方々に応援に駆けつけていただきました。この場で皆様に御礼申し上げます。

8月初めの舞台稽古開始からかぞえて約2カ月の演劇体験でしたが、たくさんの収穫がありました。まずなにより「めちゃ楽しかった」です。まったくの異分野体験で、体力的にも精神的にも大変な試練を自らに課したわけですから、ひところ流行した「富士山麓 地獄の特訓!幹部候補生研修」のような体験研修を、社長自ら望んで受講したようなものです。読者の皆さんにも、一定の年齢に達したら未知の分野にチャレンジする試練を自らに課すことをオススメしたいと思いました。

今回の舞台は演劇とはいっても英国ではTime Artというジャンルに分類される前衛的な舞台芸術であり、劇作手法そのものが斬新であったので、そこに工場管理技術のヒントになることがたくさんありました。

普通、演劇の舞台作りというのは、最初に台本が出来上がっていて、役者を集めて演出を考えながら舞台稽古をすすめるものなのですが、今回のCOLLOLの劇作手法はこれとは全く異なるもので、次のようなステップを踏みました。

まず、主宰の田口アヤコさんが基本構想を練って、役者集めをします。出演者が決まると顔合わせです。初顔合わせの会で台本とか渡されて、ストーリーや役がわかるのかと思っていたら、主宰者から「まだな~んにも決まっていません!」と言われてかなり面食らいました。「いったいどんな方向に進むのだろう、自分の役は何だろう」と不安にかられながら舞台稽古に突入しました。

舞台稽古の様子は連載第25回で紹介したように、役者同士のコミュニケーションゲームのような楽しいものでしたが、その過程で主宰者は構想を固めていったのです。役者の中から2、3人を選んで即興の踊りや会話をさせ、その組み合わせから醸し出される雰囲気やイメージを膨らませて台本をつくり、演出を決めていきます。

筆者はこれを、集めた役者の即興劇を取り込みながら、劇作を進める手法と理解しました。役者1人ひとりの主張や表現が台本作りに反映されていきます。舞台稽古の中盤からは、「自分の居所は自分で見つけるように」と言われるようになり、受け身の立場に甘んじて、うかうかしていると本番の舞台では自分の出番がなくなってしまうのではないかという緊張感がありました。

演劇の1ジャンルに、「インプロビゼーション」というまったくの即興劇があるのですが、COLLOLの手法は、これと台本ありきの伝統的な劇作との中間に属する手法のようでした。即興性は、劇作過程だけでなく、舞台本番にも取り入れられており、出演者はある程度決められた制約条件の中で、自由な即興表現をすることが認められていました。本番の舞台は全6ステージあったのですが、毎回異なるものとなりました。

 

決められたストーリーはあるが、そこから外れる自由が認められ、かつ、ストーリーを決める過程に役者自身が参画している。

 

このようなありかたは、実は現実世界そのもののありかたにかなり近いのではないかと考えました。私たちの世界にはある程度のストーリー(物語)が決まっていて、そこから完全に逃れることはできないのだけれど、ストーリー作りそのものに参画する道もひらけていて、かつストーリーに従わない自由もある。ということです。

こんな話を舞台後の懇親会で久保編集長としていたら、QCサークルの停滞を打破するヒントになりそうですねという話題に発展しました。皆さんよくご存じのQCストーリーです。これにとらわれるあまり、QCサークルの中には活動が形骸化しているところもあるのだそうです。そこからの脱却のヒントがCOLLOLの劇作手法が得られないものかと考えました。機会をいただければチャレンジしてみたいと思っています。

また、先月号の記事では、筆者の提唱する「工学的時間論」の芸術的表現・発表の場に演劇の舞台がなりそうだと述べましたが、筆者はタイムエンジニアとして公演中一貫して「時」を表現し続け、他の出演者も巻き込んで、複数の時間の流れを表現するシーンを盛り込むことにも成功しました。さらに、その後の展開として、11、12月に開催されるフェスティバルトーキョー(F/T13)の演目のひとつであるF/Tモブにおいても、独自の時間論を表現する場が得られそうです。

COLLOLの公演で、このことをお知らせしたら、国際的に著名な演出家である矢内原美邦さんから、彼女の主宰するダンスパフォーマンスの制作過程で、工学的時間論の講義をするように依頼をいただいたのです。筆者の時間論の講義を聴いたダンサー100人が「時」をテーマとするダンスパフォーマンスを繰り広げることになりました。いやはや、ひょんなきっかけの演劇体験がどんどん拡がりを見せています。

第26回 工学的時間論2

この連載の第14回で、「リードタイムから工学的時間論へ」と題して時間に対する新概念の提唱を行いました。リードタイムが離散量であることの発見から生まれた時間概念で、アインシュタインの時空連続体仮説とは立場を異にする「時間は鼓動・振動である」という考え方です。

時空連続体仮説とは、縦・横・高さの3次元の空間に時間軸を加えた4次元時空を想定するものですが、この前提から導き出されるのは、過去・現在・未来が(言葉として矛盾していますが)同時に存在するということです。その結果、タイムマシンや多重世界の可能性が出てきてしまい、筆者にとっては、どうにも同意できずに、気持ちの悪い思いをしてきました。

ここで、時間を空間の延長に考えるのではなく、空間とは別ものの、鼓動・振動であると考えるとすっきりします。同様の考え方は、アインシュタインと同時代の、ベルクソンという哲学者も主張していて、時間を空間の延長に考えてはならないと力説しています。

筆者は、時間の本質は鼓動・振動であるとする考え方に、「工学的時間論」という名前をつけて、適正在庫の研究のかたわらで、日々、時間の本質について考察を進めています。在庫理論の属する経営工学の研究の中から生まれた仮説であるので、工学的と称しているのです。

以上が、1年前の記事で述べた「工学的時間論」の概要です。今回はこの理論についてもう少し述べてみようと思います。

時間は鼓動でありますから、私達はそれぞれ固有の時間を持つことになります。心臓を持つ生物はその鼓動が時を刻む時計ということになります。さらに体内の器官・臓器レベルでもそれぞれの体内時計を持っています。細胞レベルにおいても生物時計の存在することが知られています。生物ではない物質においても、原子核の回りを巡回する電子の周期あるいは原子核内の素粒子においても固有の振動を示しています。これらがすべて、存在物固有の時間ということになります。

そして、その時間の長さは鼓動の回数であり、その速度は「観測者の鼓動1回分の間に被観測者の鼓動が何回カウントされたかの回数」によって測定されるものとなります。つまり、時間の速度の相対性を示すことになります。相対性理論が空間内を移動する物質の速度の相対性を明らかにしたように、工学的時間論は時間の速度の相対性を明らかにしています。

このように時間の相対性を認めることで、光のドップラー効果ともいうべき赤方偏移と、光速度一定仮説とを矛盾なく説明する理論が生まれる可能性があるのではと筆者は考えます。相対性理論は光速度一定を前提に組み立てられているのですが、そうすると光のドップラー現象とでもいうべき赤方編移の説明があやしくなることが、筆者にとっての長年の謎でした。詳しい理論構築は、専門の理論物理学者の方々に期待しているところではありますが…。

また、連載第12回で紹介したヒッグス粒子の発見によって、その存在確認に期待が高まっている暗黒物質を想定することで、光速一定仮説を補強する理論構築ができるのではないかとも考えています。とても奇想天外な発想ではあるのですが、宇宙全体に遍在する光を遮る暗黒物質が除かれることで光が伝播するのだというようなアイデアです。

赤方編移も光速一定も、残念ながら筆者は思いつきレベルのアイデアしか出せないのですが、これがご専門の方々の目に触れて精緻な理論構築につながればいいなぁと思っています。

なぜなら、工学的時間論によって時間理解のブレークスルーがなされることで、コスモクリーナーの開発につながる可能性があるからです。コスモクリーナーとは、SFアニメ「宇宙戦艦ヤマト」に出てくる放射能除去装置のことで、末期を迎えた人類の希望の星でした。放射能は半減期単位で減衰するものですから、その半減期を安全に加速することが放射能除去の方策となり、そのためには時間速度を加速する技術の開発が必要となるからです。

などという白昼夢のようなことどもを残暑厳しい日々に書き連ねておりますが、こんな時間論を芸術的に表現する機会が与えられそうです。先月号の記事で紹介した演劇の舞台においてです。筆者が目下出演に向けて稽古を重ねている舞台は、イギリスでは、”Time Art”と称されるジャンルの舞台芸術で、劇団COLLOL主宰の田口アヤコさんはタイムアーティストなのでした。そして筆者は工学的時間論をひっさげてタイムエンジニアを自称しており、タイムアーティストとタイムエンジニアの出会いによって、その舞台に工学的時間論の世界が展開されようとしています。

この記事が世に出る頃には舞台は終わっていることと思いますが、もし舞台をご覧になった方がいらしたら思い出してその意味をお考えになっていただけたらと思います。

第25回 役者デビューします!

いきなりですが、勝呂隆男は役者デビューします。劇団COLLOLの「サリー・キャロル」という舞台です。9/19~22、東京・代田橋のCHUBBY[TEL(03)3324-6684]というカフェで上演しますので、興味のある方はぜひ、観に来て下さい。

なぜ、ここへきて演劇なのか?疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。先月号で、アイデア発想の秘密を公開しましたが、演劇はその延長にあります。この原稿を執筆中に、現在進行形の演劇体験を紹介したらご納得いただけるのではないかと思い、ご説明します。

フェイスブック上のひょんなきっかけで、独創的で斬新な手法で演劇づくりをすすめている劇団COLLOL主宰・脚本・演出・女優の田口アヤコさんの面接を受けたのは、4月のことでした。田口さんは東京大学文学部出身のとても知的な方なのですが、一方とても懐の深い方でもあり、筆者にNGを出すことなく出演させていただけることになりました。以下、舞台稽古真っ最中の演劇体験をご紹介していきます。

 

(1)こころのストレッチ

舞台稽古の最初の1時間は入念な準備運動とストレッチを行います。筋トレ、整体、ヨガ、太極拳、氣功、マッサージetc…をすべてまぜこぜにしたような運動です。身体だけでなくこころまで柔らかくなってしまいます。

(2)言葉と動きのものまね&しりとり

2人1組になって会場内を動き回りながら、ものまねやしりとりをします。なんでもいいから身振り手振りや身体運動を交えて行うのがミソで、他者をトレースしようとすることで、自他の身体に対する感覚が高まっていくのがわかります。

(3)今日の私ゲーム

メンバーの誰かが突然指名を受け、朝起きてからの出来事をみんなに向かってプレゼンします。終わると、次に指名を受けた人が、先の人のプレゼンを身振りや表情を交えて再現します。それを引き継いでさらに次の人が再現します。これを繰り返していきます。いかにいいかげんに他者を見たり聞いたりしていたかが自覚されて、次第に他者の言うことを注意深く見たり聞いたりするようになります。

(4)携帯アドレス帳ゲーム

最初に指名された人の携帯電話のアドレス帳の先頭から10番目の人について、どんなきっかけで電話番号を交換して、どういうお付き合いの人なのか、なにをしている人なのか、などについて、携帯電話を手に持ちながら説明します。次の人はその携帯電話を受け取って、前の人の説明を、身振りを交えて再現します。何人か繰り返したら、別の人の携帯電話に移ってまた繰り返します。偶然に共通の友人が発見されたりして、相互理解が進んでいきます。

(5)神になった気分ゲーム

指名を受けた1人の人が、会場内で即興パフォーマンスします。つぶやいたり叫んだり、でんぐり返しをしたり、ジャンプしたり走ったり…なんでもOKです。それを他の人全員が真似て後をついて行きます。自分の動きが皆にトレースされる感覚というのは、何というか神になった気分を味わえます。

(6)COLLOLリーディング

ポエトリーリーディングというのは演劇の演目として知られている舞台上での詩の朗読ですが、これを複数の役者が一行一行を分担しながらすすめます。次の行を誰が朗読するのかは、互いに場の空気を読みながらの即興となります。読み上げる詩から立ち上がる想像世界とその場の空間を共有しながらすすめる座の演劇です。

 

と、ここまで紹介してきて、「演じる」という共通項はあっても、なんだか大人のお遊戯ではないかと誤解されそうに感じていますが、こんなことをしながら、脚本家は出演者全員の個性とそれぞれの相性などを観察・把握して台本を書いていくのだそうです。当て書きというのは特定の出演者に合わせて台本作りをする手法ですが、COLLOLの演劇手法は全員当て書き手法とでもいうべきもので、実際、今回の公演では9人の出演者全員分の9本の台本を書いてから、それを舞台上で統合していく計画のようです。これってまさに、APIMのピカソロジックとおんなじ発想ですよね。

先月号のアイデア発想法は、芸術作品や自然の美を受け身の立場で感じることがきっかけとなっていましたが、今回の演劇体験はそれを一歩進めて能動的に、自分の脳みそに働きかけを行うことになります。脚本・演出家や他の役者たちとの間で真剣なやりとりをする過程が、自分自身を再発見し再構成するプロセスそのものだからです。それだけ得られるものもビッグになりそうで、ワクワクしながらの今日この頃です。

第24回 難問・奇問・無理難題 大募集中!

適正在庫算出技術APIMだけでなく、お休みオークションやアウトドアセラピー、はっぴい分布仮説などなど、アイデアが豊富に湧き出てくる秘訣をよく尋ねられます。今月はその秘密を公開しようと思います。

APIMの最初のヒラメキが起こったのは、セミナー講師として訪れた福岡のホテルのバーで飲んでいるときのことです。2002年10月7日、ちょうど結婚記念日のことでした。そもそもリードタイムとはなんだろうと考え続けていた頃で、出張先のいつもと違う場所で飲みながらアイシュタインの特殊相対性理論の数式を思い出していたら、アイデアが降りてきたのです。すかさず、テーブルの上にあったナプキンにアイデアを書き留めて、部屋に戻ってからノートに書き連ねた数式が、APIMの原型となりました。

その後のAPIMのブレークスルーは、ピカソロジックですが、こちらは名前にも残したように、ピカソの絵を見ていてひらめいた技術です。定期発注方式の安全在庫について、もやもやした疑問を抱えていて、安そも研究(安全在庫とはそもそも何だろう研究)をすすめていた頃のことです。2008年秋、東京・六本木で大規模なピカソ展が開催されたので見にいったところ、すっかり気に入ってしまい都合10回ほど足を運びました。数カ月間ピカソとお付き合いさせていただいて、展覧会が終わった頃に、ふと気がつくと安全在庫の本質に迫る着想を得ていました。

ピカソロジックはその後拡張されて、確率的重ね合わせ合成計算技術が追加されて完成をみるのですが、そのきっかけになったのは「HIROSHIMA-HAPCHEON:二つの都市をめぐる展覧会」という前衛演劇作品でした。2010年11月25日のことです。会場となった目白にある自由学園朝日館の講堂の中にパフォーマーたちが佇んでいる姿を見た瞬間に、APIMの解空間の中に偏在する特異点の配置がイメージされて、重ね合わせロジックの必要性が理解できたのです。

APIM以外でも、お休みオークションのアイデアは、2011年9月27日の千葉館山へのサーフトリップで生まれたものです。その頃、行きつけの美容室のヘアメイクアーティストさんがよく、「希望の休みがとれないからデートができない→彼氏ができない」とぼやいていたので、何とかならないものかとぼんやり考えていました。沖でサーフボードにまたがって波待ちしていると、大きな波が砕けて虹がサーッとかかりました。その瞬間、お休みオークションのアイデアがスパークしたのです。

サーフィンきっかけはもう一つあって、アウトドアセラピーの事業化アイデアもそうです。2011年7月12日の同サーフトリップで同行した友人が海中で肉離れを起こしたので、やはり同行したセラピストの友人が、浜辺でその方の足をマッサージしたら、すぐに治ってしまって、またサーフィンを楽しむことができたという経験が原点でした。打ち上げになってみんなでお酒を飲んでいるときに、「アウトドアセラピー」という言葉をセラピストの友達が発して、そこからこのビジネスが始まったのです。

以上に示した以外にも、映画や舞台や絵画、あるいは登山や音楽ライヴなど、さまざまなきっかけで技術アイデアが生まれてきました。楽しい経験だけでなく、芸術や自然の「美」に触れた瞬間にヒラメキが起こるようです。そしてその前提となるのが、頭の中のどこかに、問題意識や課題がセットされていることなのです。

現在、筆者の頭の中にセットされている課題には、次のようなものがあります。

<課題1>

内経が摩耗して返ってきたダイスを再加工して別規格・サイズのダイスとして出荷できるのだが、その場合の安全在庫と発注点はどう考えればいいか?

<課題2>

製品グループ全体の需要予測は、ある程度正確にできるのだが、グループの中の色違いなどで細分化された一品別の出荷数が読めない。この場合の安全在庫は?

いずれも、クライアントから投げかけられた質問や課題を受けとめて、「考えときますね」と頭の中にセットしているものです。1は需要分布の計算方法の問題として解決できそうです。2は需要を分布で予測して、その重ね合わせ計算の問題として解決できそうです。あとは決定的なヒラメキを待つばかりになりました。これらが解決すると、APIMに新しいソリューションが加わることになります。

というわけで、「必要は発明の母」ということで、難しい「難問・奇問・無理難題」が大好きです。読者の皆さん!難しい問題をお持ちでしたらぜひともご連絡下さいませ。大募集中です。