新しい在庫理論が管理実務を変える

適正在庫の広場 TSCブログ
2018/01/12

 

 

従来の在庫理論が使えない理由

–九十年代の中頃から日本企業にもi2テクノロジーズやマニュジスティックスなどの需要予測エンジン(APS:Advanced Planning and ScheduLing)が普及し始めています。本来、需要が予測できれば、在庫はなくなるはずです。

「ソフトウェアベンダーの売り文句を真に受けて誤解している方が少なくないようですが、基本的に需要は予測できません。それが在庫管理の前提です。確かに理屈としては予測が100%当たれば在庫はゼロになる。そんな発想から、販売計画に対する達成率で営業部門を評価するという取り組みも一部では見られますが、そんなことをすれば営業部門は縮小均衡に陥ってしまう。逆に予測がどれだけ当たらないかを予測して、それに応じた在庫を持つというのが基本的な在庫理論の考え方です」

–しかし実務家の多くは在庫理論を使っていません。

「従来の在庫理論の理論、私は『古典OR(オペレーションズ・リサーチ)理論』と呼んでいますが、これは40年前に確立した理論です。そのため現在では使い物にならなくなっている部分がある。流通在庫にはそれなりに当てはまるものの、生産在庫には使えない。しかし、それ以外に方法がなかったので、実務家はだましだまし使うか、あるいは『理論なんて使いものにならない』として切り捨ててきたのが実情です」

–使い物にならない部分とは?

「1つはコンピューターによる在庫管理に適応していないことです。古典OR理論はMAP(Material Requirements Planning:資材所有要計画)が登場する以前に開発された手法で、これを現在のコンピューター化された生産管理システムに適用して安全在庫を計算すると、過大な値になってしまう」

–MRPというのは、製品を部品に展開して必要な在庫量を計算するシステムのことですね。そして現在のERP(Enterprise Resource Planning:統合業務パッケージ)もMRPベースになっている。

「そのために現在のERPも、在庫水準の設定は担当者任せになっています。ERPやAPSには在庫基準値を入力して在庫を適正な在庫基準値を設定する理論がないため、そこは実務家が経験的に推測値を入力している。その結果、推測値が実際の適正水準より大き過ぎた時には在庫過多、小さすぎると欠品が発生するといった事態を招いています。」「また古典OR理論は生産に必要なリードタイムや顧客の要求する納品のリードタイムが一定であることを前提にしています。しかし、実際には生産も顧客の求めるリードタイムも変動するのが普通です。さらに月に1〜2回とか、週に1回といった間欠的な需要にも古典OR理論た対応していない」

 

【ITに経験と勘は通用しない】

–それに対して、勝呂さんは昨年9月に発行された著書「適正在庫の考え方・求め方」(日刊工業新聞社)のなかで新しい在庫理論を提唱されていますね。この手の専門書としては異例の売れ行きとも聞いています。

「従来の在庫管理の教科書は在庫理論について1〜2項しか割いていませんでした。単に計算式を紹介して、こういう考え方もあるけど、実際には勘と経験が必要ですといった事が書かれていたわけです。『適正在庫〜』では、その部分を一冊に拡大して論じました。その計算式で適正な安全在庫の水準が分かるのかということから、計算式を使って実際に在庫が減らすにはどうしたらいいのかという事を丁重に書いたつもりです」「そのうえで古典 OR理論をERPやAPSに適合するように修正した新しい在庫管理の手法として、私の開発した『 APIM(Advanced Production & Inventory Management :先端的生産在庫マネジメント)』の考え方を紹介しました。『APIM』は現在、特許も出願中です」

–APIMの考え方を簡単に説明していただけませんか?

「完全な受発注の場合、在庫は必要ありません。在庫が必要になるのは見込み生産のときです。しかし実際のビジネスでは受注生産と見込み生産で、きれいに分けられるケースはまれです。顧客の要求で納期よりも聖戦のリードタイムが長い時に、見込み生産による在庫が必要になるわけですが、要求納期も生産リードタイムも常に変動します。そのため受注生産と見込み生産が混在しているのが多くの会社の実態だと思います」「そこで APIMでは『見込み生産比率』によって受注生産分を安全在庫の計算から除く。そして、顧客の要求する納期と生産リードタイムのタイムラグ(実効リードタイム)から安全在庫の水準と発注点を求めるというアプローチをとります。これによって理論的に適正在庫を計算できるようになります」

 

【なぜ日本企業の収益性は低いのか】

 

–そもそも、勝呂さんが在庫理論に注目した理由は

 

「在庫は組織と組織の間に溜まるものです。それをコントロールするには、誰もが納得できる理論が必要です。理論がないと、力の強い組織の言いなりになってしまう。その組織だけに都合の良いことになってしまってしまう。それを避けるためには普遍的な価値を持つ、あるいは理論的に正しい数値を提示する必要が有ります。しかし、これまで日本には理論を受け入れる土壌がなく、理論そのものが使えなかった」

 

–そもそもこれまで日本企業は在庫を減らすことに、それほど重きを置いてこなかったのでは。

「企業によって温度差があります。トヨタは何十年も前からそれに取り組んできました。私が以前に勤めていた東芝もバブルが崩壊するまでの80年代後半からトヨタ生産方式の導入を目的とした在庫削減運動に徹底して取り組んでいました。そして最近、キャノンやソニー、 NECなどが本格的に生産革新に取り組むようになって、ようやく在庫の問題が経営者レベルで脚光をあびるようになってきた。しかしいまだにそうした意識のない会社の方が多いのが、日本の会社の実情だと思います。」

 

–経営者が気にしているような経営指標には、在庫削減の効果があまり鮮明には現れてきません。それも影響しているのでは。

「在庫の評価指標が未整備だという問題は確かにあります。それでも長い目で見れば在庫管理はその会社の収益力に影響してくる。今の日本の製造業の最大の課題は競争能力と収益力が一致しないことです。つまり、競争力があるのに儲からない。『強い工場、弱い本社』などと言われないように、現場はすごいけれど収益力はないという会社がいっぱいある。実際、エクセレントと言われている欧米の製造業者でも、現場は日本に比べるとはるかに下です。ところが会社の収益力ははるかに上。この違いは何なのか。やはり生産管理や在庫の適正化のようなシステム的なアプローチの違いだと私は考えています」

 

 

【新しい在庫理論が管理実務を変える】

月刊/ロジスティクス・ビジネス 特集/在庫削減の上手な会社
2004年2月

 

SCM・IT経営・実践研究会での講演予定

適正在庫の広場 TSCブログ
2018/01/05

 

弊社代表、勝呂隆男によるSCM・IT経営・実践研究会での講演予定です。是非お越しくださいませ。

日時:2018年1月27日(土) 13:00~17:00
場所:江東区 豊洲文化センター 第7研修室
http://www6.airnet.ne.jp/scmbm/

内容: 在庫現象について

テクニカルソリューションズ株式会社
代表取締役/勝呂 隆男 氏
お申し込みは>http://www6.airnet.ne.jp/scmbm/

【適正在庫、削減。適正在庫・発注点を科学的に算出するソフト】
APIM(エイピム)については>>http://www.tscinc.co.jp

みずほ総合研究所主催、みずほセミナーでの出講予定

適正在庫の広場 TSCブログ
2018/01/05

 

 

弊社代表、勝呂隆男による、みずほ総合研究所主催、みずほセミナーでの出講予定です。

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欠品防止と在庫削減を同時に実現する
『適正在庫』の求め方と使い方」実践セミナー

~これがわからなければ在庫適正化ははじまらない!
第一人者の講師が事例と演習を交えてズバリ指南~

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日時:2018年4月27日(金) 10:00~17:00
場所:みずほ総合研究所 セミナールーム
東京都千代田区内幸町1-2-1 日土地内幸町ビル3F
http://www.mizuhosemi.com/section/purchase/30-1046.html

内容: 流通業・製造業等の在庫管理担当幹部・管理者・担当者向け在庫管理・削減・欠品防止セミナー
テクニカルソリューションズ株式会社
代表取締役/勝呂 隆男 氏

お申し込みは>
http://www.mizuhosemi.com/section/purchase/30-1046.html

 

欠品を防止しながら在庫削減をすすめるためには、多すぎず少なすぎない、適正在庫を知る必要があります。 本セミナーでは、在庫理論の第一人者が、Excelを使って一品別に適正在庫数を算出する技術手法を伝授します。そして、その適正在庫の数値を使って、いかに在庫適正化を進めるかについて、豊富な実例を基にわかりやすく解説します。また、在庫適正化の重要な要素である需要予測についても、これまでになかった全く新しい手法を教えます。

 

【適正在庫、削減。適正在庫・発注点を科学的に算出するソフト】
APIM(エイピム)については>> http://www.tscinc.co.jp

第16回 不動在庫は責任追及ではなく、再発防止策の検討を!

 

在庫適正化の相談を受けて訪問し、在庫状況を拝見すると、ほぼ 100パーセントの企業で不動在庫を抱えています。不動在庫の定義は各社さまざまですが、おおむね半年ないしは1年以上出荷のない製品としているようです。APIMを使って適正在庫量を算出すると、これとの比較に基づいてより正確な不動在庫のあぶり出しが可能になりますが、基本的な考え方は変わりません。

不動在庫の問題を指摘するのは、取引先銀行や会計事務所などお金の管理関係でおつきあいのあるところであることが多いようです。その際に窓口になるのは経営者や経営スタッフであることがほとんどで、あとはトップダウンでの在庫削減指示となるようです。

不動在庫をなんとかしようという活動を進めるときに、一番まずいパターンは責任追及から始めることです。この不動在庫は誰の責任で発生したのだ!と後ろ向きの活動になってしまうと、社内の人間関係にヒビが入ってしまいますし、なにより後ろ向きなので、やる気がおきません。

大切なのは、今後は不動在庫が発生しないようにするためにどうしたらいいかを見いだすことです。現に今、発生してしまった不動在庫の処分も、できるだけ前向きの活動になるように工夫が必要です。以下、その活動の手順を示します。

|不動在庫への対処方法

 

0. 実態把握

まずやるべきことは、自社の不動在庫がどこにどれくらいあるのかをきちんと把握することです。
不動在庫の定義を決めて、該当する在庫の数量をカウントし、その金額を集計します。

 

1. 原因調査

次にやるべきことは、不動在庫の発生してしまった原因を調査することです。現場にヒアリングすると、最初は「そりゃ、決まってる!○○のせいで不動在庫になるものばかりだ!!」などと言われることが多いのですが、根気よくていねいに原因のパターン分類をして列挙することです。筆者のこれまでの経験では次のような原因が多いようです。

 

・急に売れ行きが減ってしまって売れ残った

・必要量に対して生産・調達の最小ロットが大きすぎる

・需要予測が外れて売れ残った

・需要予測を的確にしないで、適当に発注数を決めたので売れ残った

・これはいけそうだとの予測から大量に在庫確保を狙ったら見事に見込みが外れた

etc…

 

2. 原因別不動在庫金額・件数の集計

上記で原因パターンを列挙したら、そのパターン毎に不動在庫が何件あって、その金額はいくらになるのかを、集計してグラフに表します。この場合は円グラフをお勧めします。こうすることで、自社の不動在庫発生原因の傾向が目で見えるようになります。

 

3. 再発防止策の検討

不動在庫の発生原因の傾向がわかったら、次はその対策を考えます。
発生件数や金額の大きい原因から重点的に検討を進めます。

このときに注意すべきことは、積極的に、あるいは投資的な動機から確保した在庫が、予測外れによって発生してしまったような不動在庫は、仕方ないとあきらめることです。再発防止をきちんとしなければならないのは、管理不十分で発生してしまった不動在庫です。

発注数を適当に決めてしまったとか、売れ行き動向のチェックがされていなかったなどの、不動在庫を発生させる原因は取り除きましょう。そして、不動在庫を防止する方策を検討することが大切です。

例えば、販売管理システムと生産・在庫管理システムを連動させて、出荷量が減少傾向を示したらアラートを出すような機能を付け加えるとか、需要予測数を入力しないと、発注数を確定できないようにして予測行為を明確化するなどの、情報システムに歯止め機能を持たせることが有効です。

 

4. 在庫処分方策の検討

不動在庫化してしまったものは、ほとんどのものが、放っておいたら
いつまでも動かずにいるものですから、なんらかの処分が必要です。

経年劣化するような製品や、商品寿命がきまっているようなものは、期限が切れたら廃棄する必要があります。廃棄期限が来る前に早く売り切らなくてはならない品目を営業部門に伝えて、値引きやキャンペーン、セールなどの誘導施策を行いましょう。

 

以上、不動在庫への対処方法を述べました。基本は再発防止を考えることです。
決して責任追及にならないように気を配って、頑張りましょう。

 

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適正在庫のパイオニア|勝呂隆男(すぐろ たかお)

◼︎資格
文部省科学大臣 技術士(経営工学部門 39376)
経済産業大臣登録 中小企業診断士(現在休業中)
DETAILED WORK-FACTOR (SMC)

◼︎公職・所属
(1999-2005)   早稲田大学 招聘講師
(1999-)      中小企業大学校 講師
(1999-2000)   職業能力開発総合大学校 非常勤講師
(2004)    東京工業大学 招聘講師
(2004-2005)  経済産業省 戦略的基盤技術力強化事業中間評価委員
(2014-)               経済産業省委託 日本ロジスティクスシステム協会事業
「次世代物流システム構築事業」コンソーシアム委員


 

 

 

 

第9回 今さらですが、、、適正在庫とは何か?

 

|適正在庫とは「何か」

今さらですが、この連載のタイトルである「適正在庫」とは何かについて、きちんと説明をしようと思います。生産管理の世界で適正在庫という考え方を広めてきた者として、この言葉の定義をきちんと定めて世の中に知らしめる責任があると思ったからです。

生産管理用語としての適正在庫は、新聞・雑誌の経済欄などで目にする適正在庫とは少し意味が異なります。経済用語としての適正在庫には、一般的な言葉として、経営者やエコノミストが適正と考える在庫水準といった意味があるようです。しかし、この言葉を生産管理の専門用語として使うときには、次に示す定義があるということを押さえておかなくてはなりません。

 

|適正在庫の定義

欠品を防止しながら在庫を減らせる限界値。
平均在庫として示される。

|注意すべき2つの点

欠品防止と在庫削減はよくおわかりだと思いますが、平均在庫というところが理解しにくいのではないかと思います。在庫という言葉が出てきたら、注意しなくてはならない点が2つあります。

1つは、いつの時点の在庫かということ。在庫数・在庫量はつねに変動しています。モノが出荷されれば減るし、入荷されれば増えます。ですから、在庫が多いか少ないかについて議論するときには、いつの時点の在庫を見て判断するのかを決めておかなくてはなりません。

財務的には会計年度の期末在庫金額が問題になるので、マネジメントサイドからは期末在庫の最少化を求められることが多いようです。しかしだからといって、押し込み販売をしたり、出荷時期を調整して洋上在庫化したりすることで在庫を少なく見せかけるようなことはおすすめできません。

生産・在庫管理の健全さを測るためには、平均的な在庫水準である平均在庫で見る必要があります。これは、毎日の在庫数をカウントしてその平均値を計算して求めます。生産管理・在庫管理の実力を測定するには、この値が最も適しているといえます。

 

もう1つの注意点は、どんな種類の値かということです。いくつあったか、あるのかを数えた測定値は別として、発注点や安全在庫のような基準値と、理論在庫や未来在庫のような予測値の2つの種類の在庫を分けて考える必要があります。

基準値というのは、発注のトリガーとなる発注点や発注量計算式の中の項として現れる安全在庫のように、発注行為のよりどころとして使われるパラメータの数値です。予測値は言葉通りの意味で、理論在庫は所定の在庫管理を実施した時の平均在庫の予測値であり、未来在庫は出荷予測と入荷計画の差し引き計算で求められる将来時点での在庫数の予測値です。

 

ここまでの説明で、もうおわかりかと思いますが、適正在庫というのは、時点でいうと平均在庫であり、種類でいうと予測値ということになります。欠品を防止して、なおかつ在庫量が最少になるような適正な在庫管理を実施したときに実現することが予想される平均在庫ということです。最適な在庫管理を実施したときの理論在庫であるといってもいいでしょう。そしてこの値を求めるための、適正在庫の計算式は次のように簡単なものです。

 

|適正在庫=安全在庫+サイクル在庫

安全在庫は、発注点方式の安全在庫、定期発注方式の安全在庫、定期補充方式の安全在庫をそれぞれ用のAPIM関数を使うことで求めることができます。

サイクル在庫は、発注点方式の場合は固定発注量の2分の1、定期発注方式と定期補充方式の場合は、期間平均需要量の2分の1で求めることができます。

このようにして求められる適正在庫の値をどう使うか。筆者の経験では、現状在庫数の評価のために使う場合が一番多く、次いで在庫削減活動の目標値として使う場合が多いようです。自分の会社の在庫がどの程度多いのか少ないのか判断がつかないというところは意外に多く、こういうところには大いに役立っています。本当に適正な在庫であるかどうかは、他社がどうしているかから求める業界平均値などではわからないからです。

また、基準値ないしは参考値として使う場合もあります。これは生産計画を立案する際に、適正在庫に落ち着くように投入量を調整するというケースで、生産能力や歩留まりの制約があって機械的に計画を策定できないので、ベテランが鉛筆なめながら考える場合です。こんな場合でも、適正在庫がわかると計画づくりが大変楽になります。

 

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適正在庫のパイオニア|勝呂隆男(すぐろ たかお)

◼︎資格
文部省科学大臣 技術士(経営工学部門 39376)
経済産業大臣登録 中小企業診断士(現在休業中)
DETAILED WORK-FACTOR (SMC)

◼︎公職・所属
(1999-2005)   早稲田大学 招聘講師
(1999-)      中小企業大学校 講師
(1999-2000)   職業能力開発総合大学校 非常勤講師
(2004)    東京工業大学 招聘講師
(2004-2005)  経済産業省 戦略的基盤技術力強化事業中間評価委員
(2014-)               経済産業省委託 日本ロジスティクスシステム協会事業
「次世代物流システム構築事業」コンソーシアム委員